サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、個別指導と監査の対応業務をしています。
歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。
ここでは、歯科訪問診療の不正請求で医療法人の経営する複数の歯科医院が監査の対象となり、保険医療機関の指定の取消相当の取扱いとなった実例をご紹介します。平成29年11月付の取消事案であり、近畿厚生局が公表した事例です。説明のために、簡略化等をしています。
本ケースのように、複数の診療所を展開する医療法人の歯科医院で不正請求の疑義が生じ監査となった場合、不正請求の疑義の内容により、その医療法人のグループ内の他の歯科医院でも監査が実施されることがあります。特に、訪問歯科では、同種の不正請求がグループ内で広く行われている場合があり、厚生局の判断により、複数の歯科医院で監査が実施されることになります。
歯科の個別指導、監査に臨む歯科医の方は、歯科の指導、監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。
個別指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。
詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】歯科の個別指導と監査の対応法
https://歯科弁護士.com/shika-kobetushidou.html
不正請求での医療法人グループの複数歯科医院の取り消しの実例
個別指導、監査、取り消しに至る経緯
近畿厚生局の公表資料によれば、個別指導から監査に至る経緯は以下のとおりです。
1 不正請求の情報提供
平成26年12月2日及び平成27年4月15日、匿名の者から近畿厚生局指導監査課に対し、@歯科医師等の名義を借りて診療報酬の水増し請求をしている、A当該保険医療機関から半径16qを超えた病院等の施設の入所者に歯科訪問診療を行っていること及び医療法人の事務所から出発し、同事務所に戻っているにもかかわらず、同法人の各分院から歯科訪問診療を行ったものとして診療報酬を請求している旨の情報提供があった。
2 個別指導の実施、指導の中断
【A歯科医院】
平成27年10月22日及び同年11月19日、個別指導を実施したところ、技工指示書と納品書の記載内容が相違していることについて、管理者は歯科技工物の付け増し及び歯科材料を振り替えて診療報酬を不正に請求していたことを認めたものの、歯科訪問診療については、@休暇で出勤していない歯科医師名が診療録に記載されている、A歯科医師の出勤前の時間が歯科訪問診療の実施時刻として診療録に記載されている、B訪問歯科衛生指導の担当者の指導時間が重複していることについて、明確な回答が得られなかったことから、個別指導を中断した。
3 個別指導の中止、監査の実施
【A歯科医院】
個別指導において持参のあった診療録及びタイムカード等を精査した結果、上記2における@及びAの事象が多数認められ、著しい不正請求が疑われたことから、平成28年2月8日に個別指導を中止する旨を通知し、平成28年2月18日から同年12月15日まで計31日間の監査を実施した。
【B歯科医院】
平成28年3月10日にB歯科医院の開設者である医療法人が開設する別のA歯科医院に対して実施した監査において、歯科訪問診療に係る診療録に実際に行った診療時刻と異なる時刻を不実記載し、歯科訪問診療料等を不正に請求していたことが認められ、さらに、医療法人の診療所全ての事務処理を一括して行っていることから、B歯科医院においてもA歯科医院と同様に診療報酬を不正に請求していることが濃厚となり、平成28年4月28日から同年12月15日まで計26日間の監査を実施した。
取消相当の主な理由
近畿厚生局の公表資料によれば、取消相当の理由は以下のとおりです。
【A歯科医院】
1 架空請求
実際には行っていない保険診療を行ったものとして診療報酬を不正に請求していた。
2 付増請求
実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求していた。
3 振替請求
実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて、診療報酬を不正に請求していた。
4 歯科訪問診療の不正請求
実際には歯科訪問診療を行っていない時刻に歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師が出勤しておらず、歯科医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師は出勤しているが施設に訪問しておらず、歯科医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師は、診療録に記載がある施設とは別の施設で歯科訪問診療を行っているにもかかわらず、当該歯科医師が同日、同時刻に診療録に記載がある施設に訪問し、歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師は当該保険医療機関に勤務しておらず、歯科医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
【B歯科医院】
1 歯科訪問診療の不正請求
実際には歯科訪問診療を行っていない時刻に歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師が出勤しておらず、歯科医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師は、診療録に記載がある施設とは別の施設で歯科訪問診療を行っているにもかかわらず、当該歯科医師が同日、同時刻に診療録に記載がある施設に訪問し、歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師は当該保険医療機関に勤務しておらず、歯科医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
実際には診療録に記載がある歯科医師は、歯科訪問診療を行ったとされる診療時刻に個別指導を受けており、歯科医師からの指示もなく歯科衛生士が訪問しているにもかかわらず、当該歯科医師が歯科訪問診療を行ったものとして、診療報酬を不正に請求していた。
保険医療機関と患者の所在する施設の距離が16 qを超えており、当該保険医療機関から歯科訪問診療を必要とする絶対的な理由がないにもかかわらず、診療報酬を不正に請求していた。
診療報酬の不正請求の金額
近畿厚生局の公表資料によれば、監査で判明した不正・不当請求金額等は以下のとおりです。
【A歯科医院】
不正請求金額 39名分 241件 349万5796円
不当請求金額 38名分 456件 452万6594円
【B歯科医院】
不正請求金額 25名分 131件 177万1487円
不当請求金額 23名分 299件 285万8076円
※ なお、当該医療法人は平成29年2月21日付で大阪地方裁判所から破産手続開始の決定がなされています。
歯科の個別指導、監査に臨む医療法人の方は、お電話下さい。個別指導、監査への対応方法を弁護士がアドバイスします。