ＣＡＤ／ＣＡＭ冠（歯ＣＡＤ）での算定留意事項

歯科保険診療指摘事項（139）：ＣＡＤ／ＣＡＭ冠（歯ＣＡＤ）

歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、歯科の保険診療に関して、施設基準に係るＣＡＤ／ＣＡＭ冠、エンドクラウン以外の場合（歯ＣＡＤ）、エンドクラウンの場合（歯ＣＡＤ（ＥＣ））での算定留意事項、算定要件、個別指導での指摘事項などについてご説明します。

ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト（歯科）令和６年度改訂版ｖｅｒ．２４１１に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。

なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。

歯科のＣＡＤ／ＣＡＭ冠（歯ＣＡＤ）での指摘事項

　１　算定できない歯ＣＡＤ

算定できないＣＡＤ／ＣＡＭ冠に係る一連の費用を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠に係る施設基準の届出を行っていない、医師からの診療情報提供（診療情報提供料の様式に準ずるもの）に基づかず、歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有する患者の大臼歯部に対して実施している《第一大臼歯又は第二大臼歯にＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅲ）を使用する場合》、【同側に大臼歯による咬合支持がない、　　】等、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠（Ⅲ）を第一大臼歯または第二大臼歯に適応する基準に該当していない。

【コメント】
ＣＡＤ／ＣＡＭ冠（歯ＣＡＤ）とは、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料との互換性が制限されない歯科用ＣＡＤ／ＣＡＭ装置を用いて、作業模型で間接法により製作された歯冠補綴物をいうとされています。

「１　２以外の場合」（歯ＣＡＤ）は以下のいずれかに該当する場合に算定するとされています。

イ　前歯又は小臼歯に使用する場合

ロ　第一大臼歯又は第二大臼歯にＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅲ）を使用する場合（当該ＣＡＤ／ＣＡＭ冠を装着する部位の対側に大臼歯による咬合支持（固定性ブリッジによる咬合支持を含む。以下、大臼歯による咬合支持という。）がある患者であって、以下のいずれかに該当する場合に限る。）
①　当該ＣＡＤ／ＣＡＭ冠を装着する部位と同側に大臼歯による咬合支持があり、当該補綴部位に過度な咬合圧が加わらない場合等
②　当該ＣＡＤ／ＣＡＭ冠を装着する部位の同側に大臼歯による咬合支持がない場合は、当該補綴部位の対合歯が欠損（部分床義歯を装着している場合を含む。）であり、当該補綴部位の近心側隣在歯までの咬合支持（固定性ブリッジ又は乳歯（後継永久歯が先天性に欠如している乳歯を含む。）による咬合支持を含む。）がある場合

ハ　歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有する患者において、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅲ）を大臼歯に使用する場合（医科の保険医療機関又は医科歯科併設の保険医療機関の医師との連携の上で、診療情報提供（診療情報提供料の様式に準ずるもの）に基づく場合に限る。）

ニ　大臼歯にＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅴ）を使用する場合

「２　エンドクラウンの場合」（歯ＣＡＤ（ＥＣ））はＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅲ）を大臼歯に使用する場合に算定するとされています。

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠を装着する場合は、次により算定するとされています。

イ　歯冠形成を行った場合は、１歯につき、生活歯の場合は歯冠形成の「１のロ　非金属冠」及び「注５」の加算を、失活歯の場合は歯冠形成の「２のロ　非金属冠」及び歯冠形成の「注８」の加算を算定する。

ロ　印象採得を行った場合は、１歯につき、印象採得の「１のロ　連合印象」を算定する。

ハ　装着した場合は、１歯につき装着の「１　歯冠修復」、装着の「注１」の加算及び特定保険医療材料料を算定する。

歯槽中隔部に骨吸収及び肉芽を形成している下顎大臼歯を保存可能と診断した場合において、当該歯を近遠心根の中隔部において分離切断し、中隔部を掻爬するとともに、各根管に対し歯内療法を行った上で、１つのＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅲ）から「２　エンドクラウンの場合」を除くＣＡＤ／ＣＡＭ冠（近心根及び遠心根に対する補綴物が連結されているものに限る。）を製作し、装着する場合は、金属歯冠修復の(９)に準じて算定し、分割抜歯後のＣＡＤ／ＣＡＭ冠（ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅴ）を使用する場合を除く。）の製作については、上顎の第１大臼歯又は第２大臼歯を３根のうち２根（口蓋根及び近心頬側根又は遠心頬側根のいずれか）を残して分割抜歯をした場合であって、残った歯冠、歯根の状態が歯科医学的に適切な場合に限り認められ、なお、下顎大臼歯を分割抜歯した場合は認められないとされています。

　２　誤った算定

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠装着に係る内面処理加算１を誤って算定している次の例が認められたので改めること。すなわち、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠を装着する際に、歯質に対する接着力を向上するための内面処理【アルミナ・サンドブラスト処理、プライマー処理等】を行っていない、接着性レジンセメントを用いて装着していない。

口腔内で光学印象を実施した場合に、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠に係る一連の費用を誤って算定している例が認められたので改めること。

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料(Ⅴ)を装着する際に、【歯質に対する接着性を向上するための内面処理（アルミナ・サンドブラスト処理及びシランカップリングプライマー処理等）を行っていない、接着性レジンセメントを用いて装着を行っていない】にもかかわらず、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅴ）に係る一連の費用を誤って算定している例が認められたので改めること。

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料【（Ⅲ）、（Ⅴ）】を小臼歯に使用した場合、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅰ）又は（Ⅱ）で算定すべきところを、算定できないＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料（Ⅲ）を算定している例が認められたので改めること。

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料【　　】を使用した場合、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料【　　】で算定すべきところを、誤ってＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料【　　】を算定している例が認められたので改めること。

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料【(Ⅲ)、（Ⅳ）、（Ⅴ）】の材料の名称およびロット番号等を記載した文書（シール等）が適切に保存・管理されていないため、適切に保存、管理すること。

【コメント】
「２　エンドクラウンの場合」（歯ＣＡＤ（ＥＣ））について、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料との互換性が制限されない歯科用ＣＡＤ／ＣＡＭ装置を用いて咬合面全体を被覆する形態のＣＡＤ／ＣＡＭインレーを製作した場合は算定できず、「２　エンドクラウンの場合」（歯ＣＡＤ（ＥＣ））は、歯科用ＣＡＤ／ＣＡＭ装置を用いて、歯冠部と髄室保持構造を一塊にした歯冠補綴物を製作した場合をいい、咬合面全体を被覆する形態のＣＡＤ／ＣＡＭインレー（補助的保持形態を有するものを含む。）は含まれないとされています。なお、エンドクラウンについては、公益社団法人日本補綴歯科学会の「保険診療におけるＣＡＤ／ＣＡＭ冠の診療指針２０２４」を参考とすることとされています。

保険医療機関が、医療機器として届け出たＣＡＤを設置しているＡ歯科技工所及び医療機器として届け出たＣＡＭを設置しているＢ歯科技工所に対して連携が確保されている場合は、当該技術に係る設置基準を満たしていると考えてよく、この場合は、届出様式の備考欄にＣＡＤを設置している歯科技工所名及びＣＡＭを設置している歯科技工所名がそれぞれ分かるように記載し、当該療養に係る歯科技工士名を記載するとされています。

保険医療機関内に歯科技工士が配置されているものの、歯科用ＣＡＤ／ＣＡＭ装置が設置されていないために、歯科用ＣＡＤ／ＣＡＭ装置を設置している他の歯科技工所と連携している場合は、届出様式に保険医療機関内の歯科技工士名の記載は不要であり、保険医療機関が連携している歯科用ＣＡＤ／ＣＡＭ装置を設置している歯科技工所名及び当該療養に係る歯科技工士名を記載するとされています。

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠の施設基準において、単なるスキャニングのみを行う装置をＣＡＤ装置として届出を行うことはできず、ＣＡＤ装置とは、コンピュータ支援設計により歯冠補綴物の設計を行うためのソフトウェアが具備され、医療機器として届出が行われた装置をいうとされています。

施設基準として届出を行ったＣＡＤ／ＣＡＭ装置について、機器の変更の都度、届出を行うことは不要とされています。ただし、保険医療機関において、使用するＣＡＤ／ＣＡＭ装置について、薬機法に基づく届出が行われている機器であること、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠用材料との互換性が制限されない機器であること等について確認することとされています。

個別指導、監査に臨む歯科医の方は、お電話下さい。歯科の個別指導、監査への対応を弁護士がサポートし、指導監査に弁護士が同席します。

歯科の指導、監査のコラム

歯科医院の指導、監査の弁護士のコラムの一覧です。
歯科での施設基準のＣＡＤ／ＣＡＭ冠、エンドクラウン以外の場合、歯ＣＡＤ、エンドクラウンの場合、歯ＣＡＤ（ＥＣ）の算定留意事項、算定要件の他、様々なコラムがございます。
個別指導（歯科）の際や日常の診療にご活用下さい。

　１　歯科の指導監査に関するコラム

１　歯科の個別指導と監査の対応法

２　歯科の新規個別指導の対応法

　２　歯科保険診療指摘事項のコラム

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠（歯ＣＡＤ）での算定留意事項

指導監査

SUNBELL LAW OFFICE弁護士個別指導

サンベル法律事務所
〒160-0004
東京都新宿区四谷1-18
オオノヤビル7階
TEL 03-5925-8437
FAX 03-5925-8438

弁護士鈴木陽介歯科書籍歯科個別指導

インターアクション，2022年

弁護士鈴木陽介歯科書籍歯科 M&A

学建書院，2016年

弁護士鈴木陽介歯科書籍歯科弁護士

クインテッセンス出版，2013年

ＣＡＤ／ＣＡＭ冠、エンドクラウン以外の場合、歯ＣＡＤ、エンドクラウンの場合、歯ＣＡＤ（ＥＣ）の算定での厚生局の指摘事項（歯科）のコラムです。