歯冠形成・窩洞形成（ＰＺ・ＫＰ）の算定留意事項

歯科保険診療指摘事項（123）：歯冠形成・窩洞形成（ＰＺ・ＫＰ）

歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、歯科の保険診療に関して、歯冠形成（ＰＺ）、生活歯歯冠形成、失活歯歯冠形成、窩洞形成（ＫＰ）での算定留意事項、算定要件、個別指導での指摘事項などについてご説明します。

ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト（歯科）令和６年度改訂版ｖｅｒ．２４１１に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。

なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。

歯科の歯冠形成・窩洞形成（ＰＺ・ＫＰ）での指摘事項

　１　算定できない加算の算定

算定できない歯冠形成の【注３、注７】に規定する加算を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、ブリッジの支台歯として小臼歯のレジン前装金属冠のための歯冠形成を行っていない。

【コメント】
歯冠形成（ＰＺ・ＫＰ）は、同一歯について、１回に限り歯冠形成が完了した日において算定し、なお、簡単な支台築造、歯冠形成に付随して行われる麻酔等は所定点数に含まれ別に算定できないとされており、また、歯冠形成完了後、完了した日とは別の日に当該歯に行われる麻酔は別に算定するとされています。

「１　生活歯歯冠形成」は歯冠形成に付随して行われる処置等の一連の費用は含まれるが、歯冠修復物の除去は別に算定するとされています。

「１のイ　金属冠」及び「２のイ　金属冠」の金属冠とは、全部金属冠、チタン冠、レジン前装金属冠、レジン前装チタン冠、前歯の４分の３冠及び臼歯の５分の４冠をいうとされています。

「金属冠」とは、全部金属冠、チタン冠、レジン前装金属冠、レジン前装チタン冠、前歯の４分の３冠、臼歯の５分の４冠等、全部金属冠方式又は全部金属冠に準ずる方式で製作する金属歯冠修復（例えば前歯において審美性の観点から唇側の歯質を一部露出させる場合）をいい、４面又は５面の金属歯冠修復の全てが該当するものではないとされています。

「１のロ　非金属冠」及び「２のロ　非金属冠」の非金属冠とは、硬質レジンジャケット冠、ＣＡＤ／ＣＡＭ冠及び高強度硬質レジンブリッジの支台歯に対する冠をいうとされています。

「１のハ　既製冠」及び「２のハ　既製冠」の既製冠とは、乳歯金属冠及び既製金属冠をいうとされています。

「注１」に規定するブリッジ支台歯形成加算は、ブリッジの支台歯形成に際して、支台歯間の平行関係を確認した上で支台歯形成を行った場合に算定し、また、隣接歯等の状況からやむをえず、ポンティックの（６）の（ト）に規定する支台歯１歯の接着ブリッジによる延長ブリッジを行う場合も当該加算を算定して差し支えないとされています。

接着冠に係る歯冠形成は、「１のイ　金属冠」に準じて算定するとともに「注４」に規定する加算を算定し、また、「注３」及び「注７」に規定する加算は、ブリッジの支台歯として小臼歯の歯冠形成を実施した場合に限り算定できるとされています。

「注４」に規定する接着冠形成加算は、接着ブリッジの支台歯に用いる接着冠として、生活歯に対して歯冠形成を実施した場合に限り算定でき、また、「注10」に規定する加算は、ＣＡＤ／ＣＡＭインレーのための窩洞形成を実施した場合に限り算定できるとされています。

「３　窩洞形成」は１歯単位に算定し、また、同一歯に２箇所以上の窩洞形成を行った場合も、窩洞数にかかわらず１回に限り算定するとされています。

「３のイ　単純なもの」とは、隣接歯との接触面を含まない窩洞をいい、「３のロ　複雑なもの」とは、隣接歯との接触面を含む窩洞をいうとされています。

燐酸セメント又はカルボキシレートセメント等のセメントにより充填を行うための窩洞形成は、「３のイ　単純なもの」により算定し、可動性固定ブリッジ（半固定性ブリッジ）の可動性連結装置は、「３のロ　複雑なもの」により算定するとされています。

歯冠修復物の脱落時において、軟化象牙質を除去して再形成を行った場合の軟化象牙質の除去は、う蝕処置により算定し、また、初期う蝕早期充填処置を実施した歯について、やむを得ず充填形成又はインレー形成を行う場合は、「３　窩洞形成」により算定するとされています。

　２　誤った算定

歯冠部の唇側歯質が十分に残存している前歯部の失活歯に対して、歯冠部の破折の防止を目的として、複合レジン（築造用）及びファイバーポスト（支台築造用）又は複合レジン（築造用）及びスクリューポスト（支台築造用）を併用して支台築造を行った後に、充填のための歯冠形成を行った場合に、歯冠形成「３　窩洞形成」として算定すべきものを「う蝕歯即時充填形成」で算定している例が認められたので改めること。

【　　】として算定すべきものを【　　】として誤って算定している例が認められたので改めること。

【コメント】
歯冠形成について、注６の加算に関し、単冠及びＢｒの支台歯共に加算ができるとされています。

また、ブリッジの支台歯形成を支台歯間の平行関係を確認した場合は、支台歯それぞれの歯冠形成が完了した日に歯冠形成及びブリッジ支台歯形成加算を算定して差し支えなく、なお、当該歯冠形成がブリッジの支台歯であることがわかるように、診療報酬明細書の「傷病名部位」欄にブリッジの病名を記載することとされています。

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