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手術中の患者急変の歯科訴訟の判例をご紹介します。歯科トラブル、歯科訴訟、歯科裁判にお悩みの歯科医の方は、歯科医師のための弁護士、サンベル法律事務所に迷わずご相談下さい。

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歯科訴訟:歯根嚢胞開窓術中の急変による死亡

歯科医療トラブルに強い、歯科医師のための弁護士です。

歯根嚢胞開窓術に関する患者トラブルにお悩みの歯科医師の方は、迷わずご相談下さい。初期対応が肝心です。まず弁護士に相談しアドバイスを受けることを強くお勧めします。


弁護士鈴木が力を入れている歯科医院法務に関するコラムです。
ここでは、歯科訴訟の判例のご紹介、ご説明を致します。


取り上げる判例は、平成25年9月17日福岡地方裁判所の判決です。
なお、説明のために、事案等の簡略化をしています。
判決の原文は、裁判所のホームページ上に公開されており、以下となります。
・ 判例:歯根嚢胞開窓術中の急変による死亡

 事案の概要

国立大学病院が運営する大学病院において、歯根嚢胞の処置のために抜歯及び嚢胞開窓術を受けた患者(昭和57年10月4日生)が同手術中に死亡したことについて、担当医らが、麻酔注射を不適切に行い、その後の救命処置も適切に行わなかったなどとして、遺族が1億1166万2244円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案です。

事案の概要は以下のとおりです。

1 急変に至るまでの経緯

患者は、左下臼歯部(左下6番歯)に疼痛を感じ、平成20年1月5日、歯科医院で診察を受け、同医院から紹介され、同月7日、大学病院で診察を受けた。
担当医らは、患者の症状は、左下5番・6番歯の顎骨に存在する歯根嚢胞によるものであると診断し、同月8日、患者に対し、左下6番歯の抜歯及び嚢胞開窓術の手術を行うことを説明し、患者は同意した。
本件手術は、同月10日に実施され、担当医らは、午前10時頃、患者に、伝達麻酔・浸潤麻酔として、2%キシロカイン(1/8万エピネフリン含有)を3.6ml投与した。
担当医らは、Cの左下6番歯の抜歯を試みたが、動揺しないため、タービンにて分割を試みた。これにより、Cの左下6番歯の歯冠部のみが割れたので、さらに歯根部を近遠心方向に分割し、遠心根と近心頬側根を抜去した。その後、残根部分の確認のためX線撮影が行われることになり、患者は、処置室からX線撮影のための検査室に移動した。そして、患者に対するX線撮影は、午前11時10分頃終了した。
担当医らは、処置室に帰室した患者に、浸潤麻酔として2%キシロカイン(1/8万エピネフリン含有)0.9mlを追加投与し、抜歯を再開した。しかし、患者の全身に振戦が出現したことから、手術は中断され、また、患者には、過換気症候群の治療法の一つであるペーパーバック法が実施されたが、患者が余計苦しいと訴えたため中止された。この頃、患者には、頻呼吸があり、上肢にはチアノーゼがみられた。また、患者の体温が42℃であることも確認された。

2 急変後、患者死亡に至るまでの経緯

午前11時50分頃、歯科麻酔科の医師が応援要請により処置室に到着し、患者への救急措置を開始した。そして、午前11時52分頃、ミダゾラム1mgを投与し、午後零時頃、ミダゾラム2mgを追加投与した。
その後、患者は、救命救急センターに搬送され、午後零時15分に到着した。
患者の病態は、午後6時頃には、播種性血管内凝固症候群になったことが判明し、翌11日午前9時頃には多臓器不全となったことが判明した。その後も、救命救急センターにおいて治療が続けられたものの、患者は、同年2月20日に死亡した。

 主要な争点及び裁判所の判断

争点1 患者死亡に至る機序

裁判所の判断:
・ 患者がアナフィラキシーショックを発症したとは認められない。
・ 患者に生じた症状が、キシロカイン中毒によるものとはいえない。
・ 患者が悪性高熱を発症したとは認められない。
・ 患者は敗血症性ショックを発症したと認められる。

争点2 初期救命救急処置を施す際の義務違反の有無

裁判所の判断:
・ 担当医らは、午前11時30分ころ、連絡をとり患者の全身管理を歯科麻酔医に委ねるべき義務があった。
・ 一方で、午前11時30分ころ、救急救命センターに搬送すべき義務があったとまではいえない。
・ 担当医らに、過換気症候群との誤診及び誤診に基づく処理に関して義務違反は認められない。
・ 担当医らのミダゾラムの投与に関して義務違反を認めることはできない。
・ 担当医らにクーリングの遅れに関して義務違反を認めることはできない。

争点3 義務違反と死亡との因果関係の有無

裁判所の判断:
・ 担当医らは、午前11時30分ころ、連絡をとり患者の全身管理を歯科麻酔医に委ねるべき義務があった。
・ 義務を履行すれば、数分速く救命救急センターに到着することができた。
・ その場合でも、患者の死亡時点において、患者がなお生存していた高度の蓋然性は認められない。
・ しかし、患者の死亡時点において、患者がなお生存していた相当程度の可能性があったと認められる。

争点4 損害の発生及び額

裁判所の判断:
・ 生存していた相当程度の可能性の侵害の慰謝料の額として、200万円が相当である。
・ 弁護士費用相当の損害金として20万円が相当である。

 判決:結論

被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する平成20年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


歯科トラブル、歯科訴訟、歯科裁判に悩んでいる歯科医の方は、迷わずお電話を下さい。診療録などの証拠及び患者の主張内容などを十分に確認聴取した上で、取るべき対応、留意点などをアドバイス致します。


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