歯科のトラブルを解決する歯科医師のための弁護士です。
カルテ保存の期間や廃棄の時期にお悩みの歯科医師の方は、迷わずご相談下さい。
弁護士鈴木が力を入れている歯科医院法務に関するコラムです。
ここでは、歯科医院のカルテの保存期間、カルテの廃棄処分についてお話をします。
歯科のカルテの保存義務期間
歯科医師法23条は、以下のとおり、カルテの保存期間を5年と定めています。
〇歯科医師法23条
1 歯科医師は、診療をしたときは、
遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であって、
病院又は診療所に勤務する歯科医師のした診療に関するものは、
その病院又は診療所の管理者において、
その他の診療に関するものは、
その歯科医師において、5年間これを保存しなければならない。
患者のカルテ等(エックス線写真などを含む。)に関して、5年を超える保存義務を課す法律は見当たりませんので、5年を経過したカルテ等は、法的には、廃棄して差し支えありません。
係る保存期間5年の起算点ですが、法律解釈の問題でありますところ、その患者のその歯科医院での当該疾患の治療が終了、完了した日が基準になると考えられています。
もっとも、メンテナンスなどにより、歯科医院への通院を継続している患者の場合は、治療が完了した日を明確に確定することが困難であるケースもあります。治療が完了した患者について、最終診療日を保存期間5年の起算点と考えれば確実です。
例えば、治療を平成22年1月に開始し、平成23年6月に治療が完了し、それ以降通院のない患者の場合は、平成23年6月がカルテ全体についての保存期間の起算点となります。
歯科のカルテの廃棄処分
保存義務期間は5年ですが、ではいつまで保存するか、いつ廃棄するか、問題となります。
カルテの保存義務期間経過後の廃棄処分のおもな利害得失は、以下のとおりです。
メリット :・ 保管コストが不要となる。
・ 患者情報漏えいのリスクがなくなる。
デメリット:・ 患者の診療の記録がなくなり、
久方ぶりの患者来院などの際に参照できなくなる。
・ 患者が過去の治療のクレームをしてきた場合に、
立証が困難となる。
(※ 歯科医院側、患者側、
双方が立証が困難となる。
長期間経過後のクレームは、
リーマー・ファイル破折など、
異物遺残のケースが多い。)
歯科医療過誤訴訟の時効期間が原則として10年であるため、10年間のカルテ等の保管が勧められることがありますが、実際には、カルテ等の廃棄には勇気がいるため、廃院まで、超長期間保管している歯科医院も多いようです。
私見では、廃棄には勇気がいりますが、必要性が乏しいにもかかわらず患者個人情報を保管し続けることも問題であり、将来的には必ずどこかの段階で廃棄しなければなりませんので、最終診療日から10年を区切りに、注意を要する治療をするなどした患者のカルテ等を除き、一律に廃棄してしまうことをお勧めします。
カルテ等を廃棄する際には、情報漏えいがないよう、適切に処分する必要があります。
カルテ等が紙媒体である場合は、シュレッダーなどを利用して復元不可能な状態にしてから廃棄するか、信用できる専門の業者に委託して、溶解処理をすべきことになります。
カルテの保存、カルテの廃棄に関してお悩みの歯科医の方は、迷わずお電話を下さい。十分にお話を伺った上で具体的なアドバイスを致します。