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注射針が抜歯手術で顎内に迷入した歯科訴訟の判例をご紹介します。歯科トラブル、歯科訴訟、歯科裁判にお悩みの歯科医の方は、歯科医師のための弁護士、サンベル法律事務所にご相談下さい。

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歯科訴訟:注射針の上顎内迷入と後遺障害

歯科診療のトラブルに強い歯科医師のための弁護士です。

迷入に関する患者トラブルにお悩みの歯科医師の方は、迷わずご相談下さい。初期対応が肝心です。まず弁護士に相談しアドバイスを受けることを強くお勧めします。

弁護士鈴木が力を入れている歯科医院法務に関するコラムです。
ここでは、歯科訴訟の判例のご紹介、ご説明を致します。


取り上げる判例は、平成17年11月2日札幌地方裁判所の判決です。
なお、説明のために、事案等の簡略化をしています。
判決の原文は、裁判所のホームページ上に公開されており、以下となります。
・ 判例:注射針の上顎内迷入と後遺障害

 事案の概要

歯科医院で患者が歯科医師から抜歯手術を受けた際、麻酔に使用する注射針の選択を誤るなどの歯科医師の過失により、使用した注射針が折れて患者の右上顎部組織内に迷入し、これにより後遺症が残存したと主張して、2903万6708円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案です。

事案の概要は以下のとおりです。

1 注射針が迷入するに至った経緯

患者(昭和52年10月13日生まれの男性)は、平成15年1月10日の本件事故当時、大学院工学研究科の大学院生であり、同年3月に同大学院を卒業して、同年4月に就職し、東京都武蔵野市所在の研究所に配属されている。
患者は、顎を開閉するたびに右耳の奥でゴリゴリと音がする症状があったことから、平成15年1月10日午前10時30分ころ、右顎の痛みを主訴として歯科医院を受診した。
歯科医師は、患者を診察した結果、右側上顎第3大臼歯と右側下顎第2大臼歯の咬頭干渉による顎関節症と診断し、患者に対し、治療方法として智歯の抜歯を勧めたところ、患者はこれに同意した。
患者は、同日午前11時ころ、智歯を抜歯するため、1.8ミリリットルの麻酔液を3回に分けて注入することとし、長さ21ミリメートル、太さ0.3ミリメートルの注射針を智歯の根尖相当部と口蓋側の2箇所に刺入したところ、刺入部の組織が硬かったため、針尖が丸くなり刺入しづらくなった。そこで、歯科医師は、組織の損傷防止と刺入し易さを考慮して、長さ14ミリメートル、太さ0.26ミリメートルの注射針に替えた上、同注射針を電動麻酔器を用いて強圧をかけずに刺入し、麻酔液を注入した。その後、歯科医師が注射針を抜こうとしたところ、同注射針は、電動麻酔器本体の根元から折れ(長さは約14ミリメートル)、患者の右上顎部組織内に破折した注射針が迷入した。
患者は、智歯を抜歯した後、オルソパントモによるX線撮影を行い、その画像により、原告の上顎頭の近心付近に残存針があるのを確認した。そこで、歯科医師は、札幌医科大学医学部附属病院口腔外科に事情を説明して、診断と治療を依頼するともに、患者に対し、注射針が折れて患者の体内に迷入したことを説明し、札幌医大を受診するよう勧めた。
患者はそれを受けて、同日直ちに札幌医大を受診し、CT撮影を行った結果、上顎結節から翼状突起にかけて破折片が認められた。
本件事故が発生したのは、歯科医師が、注射針刺入部位の組織が硬かったにも拘わらず、細い針である本件注射針を使用したため、刺入後にこれを抜くに際して注射針が破折して、残存針が患者の右上顎部組織内に迷入、残存したものであり、歯科医師の注射針の選択に過失があったものと認められる。

2 事故後の治療経過の概要

患者は、事故当日の平成15年1月10日から同年2月19日まで札幌医大に通院し診察を受けた(通院実日数6日間)後、同日以降北海道大学病院に通院し、残存針を摘出するため同月28日に同病院に入院し、同年3月3日に右上顎異物除去術を受けたが、残存針を摘出することはできなかった。その後、患者は、同月8日に同病院を退院し(入院日数9日間)、同月26日まで経過観察のため同病院に通院した(通院実日数8日間)。
患者は、転居した後、同年6月17日から同年7月10日まで防衛医科大学病院に通院した(通院実日数3日間)が、事故後の経過観察については、北大病院における摘出術の担当医であった歯科医師が患者の状態を最もよく理解していることなどの理由により、同年5月以降も、北大病院への通院を継続している。

2 事故後の患者の症状及び生活状況等

患者は、激しい痛みを感じることは大分なくなってきたものの、仕事上のプレゼンテーション等で長時間の意見発表や会話をした後、風呂に入った後及び食後は鈍い痛みが出現し、また、右半身のけだるさや倦怠感、右顎の後の方からの鈍い痛みと頭痛は継続しており、集中力や仕事の能率はかなり低下していると感じている。
北大病院における担当医は、今後もいわゆる「古傷が痛む」という症状が生じる可能性があるとしているほか、残存針は外側翼突筋の後面に付着したような状態で安定していると思われ、この状態のままで安定していれば、大事に至る可能性は低いだろうと思われるとし、今後の経過観察については、特に異常がなければ1年に1回程度の定期的な経過観察とCT撮影で足りるが、症状の悪化や新たな症状の発現がある場合には、CT撮影等の検査を早急に行う必要があると判断している。
なお、残存針の残存部位は、細かな血管や神経が多数ある所であり、現時点では、残存針の摘出は困難な状態である

 争点及び裁判所の判断

争点1 患者の後遺障害の程度

【裁判所の判断】
残存針の移動状況に照らすと、残存針は、平成15年12月ころには外側翼突筋の後面に付着したような状態で安定するに至り、症状は固定したものと認めるのが相当である。
患者の現在の症状は、激しい痛みを感じることは大分なくなってきているものの、常時ある鈍い痛みのせいでけだるさがあり、特に仕事のため長時間の発表や会話をした後などには、通常より強い鈍い痛みが出現し、患者としては患部の痛みなどのため集中力や仕事の能率が低下していると感じているというのであるから、これらの事情を総合すると、患者は通常の労務に服することはできるものの、ときには労働に差し支える程度の神経症状が出現しており、その原因は残存針の存在ないしその摘出術の合併症によるものということができ、これらは残存針の存在という他覚的所見の裏付けがあるということができるから、患者の後遺障害の程度は、後遺障害等級12級12号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」の程度に達していると認めるのが相当である。

争点2 患者の損害

【裁判所の判断】
合計               1717万8985円
 内訳 治療費及び交通費等の実費   28万6365円
    傷害慰謝料(通院慰謝料)  100万0000円
    後遺障害慰謝料       300万0000円
    後遺障害逸失利益     1139万2620円
    弁護士費用         150万0000円

 判決:結論

被告は、原告に対し、1717万8985円及びこれに対する平成15年1月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


迷入と後遺障害のトラブル、迷入と後遺障害の訴訟、裁判に悩んでいる歯科医の方は、迷わずお電話を下さい。診療録などの証拠及び患者の主張内容などを十分に確認聴取した上で、取るべき対応、留意点などを具体的にアドバイス致します。


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