フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局，う蝕多発傾向者・初期の根面う蝕・エナメル質初期う蝕）の算定留意事項

歯科保険診療指摘事項（106）：フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）

歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、歯科の保険診療に関して、フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）、う蝕多発傾向者の場合、初期の根面う蝕に罹患している患者の場合、エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合での算定留意事項、算定要件、個別指導での指摘事項などについてご説明します。

ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト（歯科）令和６年度改訂版ｖｅｒ．２４１１に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。

なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。

歯科のフッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）での指摘事項

　１　算定要件を満たしていないＦ局

算定要件を満たしていないフッ化物歯面塗布処置を算定している次の例が認められたので改めること。すなわち、当該処置を行った歯科衛生士の氏名が【診療録に記載されていない、誤っている】、歯科衛生士が当該処置を実施した場合に、当該業務に関する記録を作成していない、２％フッ化ナトリウム溶液又は酸性フッ化リン酸溶液を使用していない、【歯科疾患管理料、歯科特定疾患療養管理料】の治療計画にフッ化物歯面塗布処置を行うに当たって必要な管理計画が含まれていない。

算定要件を満たしていないフッ化物歯面塗布処置「３　エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合」を算定している次の例が認められたので改めること。すなわち、初回の算定時に、病変部位の口腔内カラー写真を【撮影していない、診療録に添付又は電子保存していない】、２回目以降の算定時に、病変部位について口腔内カラー写真の撮影又は光学式う蝕検出装置を用いたエナメル質初期う蝕の部位の測定のいずれも行っていない、２回目以降の算定時に、撮影した病変部位の口腔内カラー写真の添付若しくは電子保存又は使用した光学式う蝕検出装置の名称及び当該部位の測定値のいずれも確認できない。

【コメント】
フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）の１に規定するう蝕多発傾向者とは、歯科疾患管理料での判定基準を満たすものをいい、歯科疾患管理料又は歯科特定疾患療養管理料（当該管理料の「注１」に規定する治療計画にフッ化物歯面塗布処置を行うに当たって必要な管理計画が含まれている場合に限る。）又は歯科訪問診療料を算定した患者に対して算定するなどとされています。

フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）の「２　初期の根面う蝕に罹患している患者の場合」は、根面う蝕管理料を算定している患者に対して、フッ化物歯面塗布処置を行った場合に算定するとされています。

フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）の「３　エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合」は、エナメル質初期う蝕管理料を算定している患者に対して、当該病変部位の口腔内カラー写真の撮影を行い、フッ化物歯面塗布処置を行った場合に算定し、撮影した口腔内カラー写真は、診療録に添付又はデジタル撮影した画像を電子媒体に保存して管理し、なお、写真撮影に係る費用は所定点数に含まれ別に算定できず、また、２回目以降に「３　エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合」を算定する場合において、光学式う蝕検出装置を用いてエナメル質初期う蝕の部位の測定を行った場合は、口腔内カラー写真撮影に代えて差し支えなく、この場合において、使用した光学式う蝕検出装置の名称と当該部位の測定値を診療録に記載又は添付することとされています。

フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）は、次の取扱いとするとされています。

イ　フッ化物局所応用による指導管理に用いる局所応用フッ化物製剤とは、２％フッ化ナトリウム溶液、酸性フッ化リン酸溶液をいう。

ロ　フッ化物歯面塗布とは、綿球による歯面塗布法、トレー法及びイオン導入法等の通法に従い、主治の歯科医師又は歯科衛生士が行う局所応用をいう。

ハ　薬剤料は、当該加算の所定点数に含まれ別に算定できない。

ニ　フッ化物歯面塗布処置は、１口腔単位での継続的な処置を評価したものであり、エナメル質初期う蝕及び初期の根面う蝕を有する患者については、いずれかの主たる疾患に対してのみ算定できる。

　２　算定できないＦ局

算定できないフッ化物歯面塗布処置「１　う蝕多発傾向者の場合」を算定している次の例が認められたので改めること。すなわち、歯科疾患管理料の留意事項通知(11)及び(12)に掲げるう蝕多発傾向者の判定基準を満たすものに該当していない、同一初診期間中に歯科疾患管理料、歯科特定疾患療養管理料又は歯科訪問診療料のいずれも算定していない、フッ化物歯面塗布処置を算定した月の翌月の初日から起算して２月以内に算定している。

算定できないフッ化物歯面塗布処置「２　初期の根面う蝕に罹患している患者の場合」を算定している次の例が認められたので改めること。すなわち、同一初診期間中に根面う蝕管理料を算定していない、フッ化物歯面塗布処置を算定した月の翌月の初日から起算して２月以内に算定している。

算定できないフッ化物歯面塗布処置「３　エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合」を算定している次の例が認められたので改めること。すなわち、同一初診期間中にエナメル質初期う蝕管理料を算定していない、フッ化物歯面塗布処置を算定した月の翌月の初日から起算して２月以内に算定している（口腔管理体制強化加算を算定している患者を除く）。

【コメント】
フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）について、根面う蝕管理料を算定した患者またはエナメル質初期う蝕管理料を算定した患者に対して算定可能となったが、これらの患者について、同月内に当該管理料を算定していない場合であっても、同一初診期間中に当該管理料を算定しており、初期の根面う蝕またはエナメル質初期う蝕の管理を行っている場合は、算定して差し支えないとされています。

フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局）について、う蝕多発傾向者の場合、初期の根面う蝕に罹患している患者の場合、エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合は、フッ化物歯面塗布処置は１口腔単位での算定となるため、併算定はできないとされています。

充填等によるう蝕治療を行った月の翌月以降に、充填等を行った歯面と異なる歯面にエナメル質初期う蝕が認められた場合は、エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合を算定して差し支えなく、その場合は、診療報酬明細書の摘要欄に充填等が行われた歯面とエナメル質初期う蝕の管理を行う歯面をそれぞれ記載するとされています。

エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合を算定する場合、診療報酬明細書の傷病名部位欄の病名は、「エナメル質初期う蝕」または「Ｃｅ」と記載するとされています。

光学式う蝕検出装置を用いてエナメル質初期う蝕の部位の測定を行った場合は、使用した光学式う蝕検出装置の名称と当該部位の測定値を診療録に記載するとなっているが、同じ光学式う蝕検出装置を用いる場合は、当該装置の名称は当該装置を使用した初回に記載すればよいとされています。

　３　カルテへの適切な記載

使用薬剤名を診療録に記載していない例が認められたので、適切に記載すること。

【コメント】
主治の歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、患者に対してフッ化物歯面塗布処置を行った場合は、主治の歯科医師は当該歯科衛生士の氏名を診療録に記載し、なお、当該処置を行った歯科衛生士は、業務に関する記録を作成するとされています。

歯科衛生士の業務に関する記録の作成について、十分注意して下さい。

個別指導、監査に臨む歯科医の方は、お電話下さい。歯科の個別指導、監査への対応を弁護士がサポートし、指導監査に弁護士が同席します。

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フッ化物歯面塗布処置（Ｆ局、う蝕多発傾向者、初期の根面う蝕、エナメル質初期う蝕）の算定での厚生局の指摘事項（歯科）の、弁護士のコラムです。