歯周病処置（Ｐ処）の算定留意事項

歯科保険診療指摘事項（82）：歯周病処置（Ｐ処）

歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、歯科の保険診療に関して、歯周病処置（Ｐ処）での算定留意事項、個別指導での指摘事項などについてご説明します。

ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト（歯科）令和６年度改訂版ｖｅｒ．２４１１に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。

なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。

歯科の歯周病処置（Ｐ処）での指摘事項

　１　算定要件を満たしていないＰ処

算定要件を満たしていない歯周病処置を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、使用薬剤名を診療録に記載していない。

【コメント】
歯周病処置（Ｐ処）は、歯周病の症状の改善を目的として、歯周ポケットに対して特定薬剤を使用した場合に、１口腔を単位として算定し、なお、歯周病処置を算定する場合は、使用薬剤名を診療録に記載することとされています。

歯周病処置を算定する歯周ポケットに対して特定薬剤を使用する場合は、用法用量に従い使用した場合に限り特定薬剤料として別に算定し、また、歯周基本治療の後の歯周病検査の結果、期待された臨床症状の改善がみられず、かつポケット深さが４ミリメートル以上の部位に対して、十分な薬効が期待できる場合において、計画的に１月間特定薬剤を使用した場合は、本区分により算定し、なお、当該処置後、再度の歯周病検査の結果、臨床症状の改善はあるが、ポケット深さが４ミリメートル未満に改善されない場合であって、更に１月間継続して薬剤を使用した場合は同様に算定するものとされています。

　２　算定できないＰ処

算定できない歯周病処置を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、歯周基本治療の後の歯周病検査の結果、期待された臨床症状の改善がみられず、かつ歯周ポケットが４ミリメートル以上の部位に対して、十分な薬効が期待できない、歯周病による急性症状時に症状の緩解の目的で特定薬剤を歯周ポケットに使用する場合に該当しない、計画的に１月間特定薬剤を使用する場合、歯周病処置の前に【歯周基本治療、歯周基本治療後の歯周病検査】を行っていない、糖尿病を有する患者に対する歯周基本治療と並行した計画的な歯周病処置を行う場合に、医師からの診療情報提供（診療情報提供料の様式に準ずるもの）が行われていない、【歯周病安定期治療、歯周病重症化予防治療】を開始した日以降である、同一月に【非経口摂取患者口腔粘膜処置、口腔バイオフィルム除去処置】を算定している。

【コメント】
歯周病処置（Ｐ処）について、歯周病による急性症状時に症状の緩解を目的として、歯周ポケットに対して薬剤を使用した場合は、本区分により算定し、また、糖尿病を有する患者であって、ポケット深さが４ミリメートル以上の歯周病を有するものに対して、歯周基本治療と並行して計画的に１月間特定薬剤（歯科用抗生物質製剤に限る。）を使用した場合は、本区分により算定し、ただし、医科の保険医療機関又は医科歯科併設の保険医療機関の医師からの診療情報提供(診療情報提供料の様式に準ずるもの)に基づく場合に限るとされています。

なお、糖尿病を有する患者であって、ポケット深さが４ミリメートル以上の歯周病を有するものに対して、歯周基本治療と並行して計画的に１月間特定薬剤を使用した後に症状の改善が認められない場合は、１月間特定薬剤を使用した後、歯科医学的に必要がある場合にあっては、さらに１月間程度継続して薬剤を使用して差し支えなく、ただし、最初に１月間特定薬剤を使用した後、改善の傾向が認められない場合においては、診療情報提供のあった医科の医療機関に照会する等、糖尿病のコントロール状態についても確認することが望ましいとされています。

　３　適切な治療方針

ポケット深さが４ミリメートル以上の部位に対して、計画的に１月間特定薬剤使用後、再度の歯周病検査の結果、ポケット深さが４ミリメートル未満に改善されているにもかかわらず、必要性の認められない特定薬剤の使用を更に１月間継続している例が認められたので改めること。

歯周病処置時の歯周ポケット内への薬剤使用において、特定薬剤として承認された用法以外の方法で使用している不適切な例が認められたので改めること。

特定薬剤の使用に当たって、【同一シリンジを複数の患者に使用している、使用後の残薬を保存して複数日にわたって同一患者に使用している】不適切な例が認められたので改めること。

歯周病の原因の除去のために必要な歯周基本治療等を十分に行うことなく、急性症状時の対症療法である歯周ポケット内への薬物使用を繰り返していたので、適切な治療方針を立てること。

【コメント】
歯周病処置（Ｐ処）について、「歯周病による急性症状時に症状の緩解を目的として、歯周ポケットに対して薬剤を使用した場合」とあるが、具体的には、例えば、歯肉膿瘍（ＧＡ）、歯槽膿瘍（ＡＡ）、Ｐの急発等の急性症状時が想定され、なお、特定薬剤の使用については、医薬品医療機器等法上の用法等を踏まえることとされています。

また、「歯周病による急性症状時に症状の緩解を目的として、歯周ポケットに対して薬剤を使用した場合」とあるが、例えば、歯周病による急性症状により来院した患者に対して、初診当日や２回目等において、必要があって医薬品医療機器等法上の用法・用量を踏まえて特定薬剤を用いた場合には、使用料にかかわらず、歯周病処置を算定して差し支えなく、なお、特定薬剤料自体の算定ができない場合であって、「歯周病処置」の算定要件を満たす場合においては、「その他」欄に使用した特定薬剤名を記載した上で、「歯周病処置」を算定して差し支えないとされています。

再ＳＲＰを行った部位に対する歯周病処置は、再ＳＲＰを行った後に実施する歯周病検査の結果を踏まえて、特定薬剤を使用した場合に算定するものとされています。

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