咬合調整（咬調）の算定留意事項

歯科保険診療指摘事項（71）：咬合調整

歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、歯科の保険診療に関して、咬合調整（咬調）での算定留意事項、個別指導での指摘事項などについてご説明します。

ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト（歯科）令和６年度改訂版ｖｅｒ．２４１１に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。

なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。

歯科の咬合調整での指摘事項

　１　算定要件を満たしていない咬調

算定要件を満たしていない咬合調整を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、歯冠形態の修正を行った際に、修正理由、修正箇所等を診療録に記載していない。

【コメント】
咬合調整（咬調）は、次に掲げる場合に算定するとされています。
イ　一次性咬合性外傷の場合
ロ　二次性咬合性外傷の場合
ハ　歯冠形態修正の場合
ニ　レスト製作の場合
ホ　第13部　歯科矯正に伴うディスキングの場合

「イ　一次性咬合性外傷の場合」とは、一次性咬合性外傷を有する場合であって、過度の咬合圧を受ける天然歯若しくは金属歯冠修復物等（他院で製作されたものに限る。）の過高部を削合した場合又は歯ぎしりの際の咬合干渉を削合した場合をいい、イについては、「１　１歯以上10歯未満」又は「２　10歯以上」のうち、いずれかを１回算定し、ただし、前回算定した日から起算して６月以内は算定できないとされています。

「ロ　二次性咬合性外傷の場合」とは、歯周炎に罹患した患者に対して、歯周炎の治療を目的として行われる場合をいい、ロについては、「１　１歯以上10歯未満」又は「２　10歯以上」のうち、いずれかを１回算定し、ただし、前回算定した日から起算して６月以内は算定できないとされています。

「ハ　歯冠形態修正の場合」とは、食物の流れを改善し歯周組織への為害作用を極力阻止する場合、又は舌、頬粘膜の咬傷を起こすような場合等の歯冠形態修正を行った場合に算定し、ハについては、「１　１歯以上10歯未満」又は「２　10歯以上」のうち、いずれかを１回算定し、ただし、前回算定した日から起算して６月以内は算定できず、また、歯冠形態修正を行った場合は、診療録に歯冠形態の修正理由、歯冠形態の修正箇所等を記載するとされています。

「ニ　レスト製作の場合」とは、新たな義歯の製作又は義歯修理（鉤等の追加）を行うに当たり、鉤歯と鉤歯の対合歯をレスト製作のために削除した場合をいい、新たな義歯の製作又は義歯修理の実施１回につき、「１　１歯以上10歯未満」又は「２　10歯以上」のうち、いずれか１回に限り算定し、ただし、修理を行った有床義歯に対して、再度、義歯修理を行う場合については、前回算定した日から起算して３月以内は算定できないとされています。

「ホ　第13部　歯科矯正に伴うディスキングの場合」とは、顎変形症又は別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常の歯科矯正を行う際に歯の隣接面の削除を行う場合をいい、歯数に応じ各区分により算定するとされています。

　２　算定できない咬調

算定できない咬合調整を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、留意事項通知に定める処置（一次性咬合性外傷の場合、二次性咬合性外傷の場合、歯冠形態修正の場合、レスト製作の場合、第13部歯科矯正に伴うディスキングの場合）のいずれにも該当していない、【一次性咬合性外傷、二次性咬合性外傷、歯冠形態修正】に対して歯の削合を行った日から起算して６月以内に算定している、新たな義歯の製作又は義歯修理（鉤等の追加）を行うに当たり、鉤歯と鉤歯の対合歯にレスト製作のために削合した場合に、新たな義歯の製作又は義歯修理（鉤等の追加）の実施１回につき複数回算定している、【修理を行った有床義歯に対して再度の義歯修理（鉤等の追加）、修理を行ったのち有床義歯の新製、有床義歯の新製後に有床義歯の修理】を行った場合に、前回算定した日から起算して３月以内に算定している、【歯髄切断、抜髄、感染根管処置、抜歯手術】の所定点数に含まれる、患歯の安静を目的として行った咬合調整に対して算定している、自院で製作した金属歯冠修復物等の過高部の削合に対して算定している、【歯周病安定期治療、歯周病重症化予防治療】を開始した日以降に算定している（「ロ　二次性咬合性外傷の場合」として行った場合に限る）。

【コメント】
歯髄切断、抜髄、感染根管処置等の一連の歯内治療又は抜歯手術に伴って、患歯の安静を目的として行う歯の削合に係る費用は、歯髄切断、抜髄、感染根管処置、抜歯手術等に含まれ別に算定できないとされています。

なお、咬合調整（咬調）を算定する場合は、上記のイからホまでのいずれに該当するかを診療報酬明細書の摘要欄に記載することとされています。

　３　カルテへの適切な記載

歯冠形態の修正を行った際に、診療録に記載すべき内容について【画一的に記載している、記載の不十分な】例が認められたので、次の事項について個々の症例に応じて適切に記載すること。すなわち、修正理由、修正箇所。

咬合調整「１　１歯以上10歯未満」で算定すべきものを「２　10歯以上」として誤って算定している例が認められたので改めること。

【コメント】
咬合調整（咬調）の算定にあたって、歯数に関して正しく算定することが必要です。

なお、咬合異常以外の傷病が認められない患者にあっても、咬合異常に起因する早期接触等が生じている歯の過高部等を削除した場合にあっては、咬合調整を算定して差し支えないとされています。

ＰまたはＰｅｒ等による急性症状の安静化を図る目的で患歯に咬合調整を行った後で、有床義歯の鉤歯または鉤歯の対合歯をレスト製作のために削除した場合には、歯科医学的に妥当・適切であると判断された場合に限り、咬合調整をそれぞれ算定しても差し支えないとされています。

咬合調整は、歯周炎または歯ぎしりの処置のために行う歯の削合等通知で示した各々の場合に１口腔単位で算定する取扱いであるとされています。

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