抜歯手術（Ｔ．ＥＸＴ）、難抜歯加算、埋伏歯の算定留意事項

歯科保険診療指摘事項（107）：抜歯手術（Ｔ．ＥＸＴ）

歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。

歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、歯科の保険診療に関して、抜歯手術（Ｔ．ＥＸＴ）、難抜歯加算、埋伏歯での算定留意事項、算定要件、個別指導での指摘事項などについてご説明します。

ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト（歯科）令和６年度改訂版ｖｅｒ．２４１１に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。

なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。

また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。

歯科の抜歯手術（Ｔ．ＥＸＴ）、難抜歯加算、埋伏歯の指摘事項

　１　抜歯手術

抜歯手術【難抜歯加算、埋伏歯】における【症状、診断所見、手術内容、術後経過】について【診療録に記載していない、診療録への記載が不十分な】例が認められたので、個々の症例に応じて適切に記載すること。

抜歯手術の所定点数に含まれ別に算定できない抜歯と同時に行った【歯槽骨整形手術、　　】の費用を算定している例が認められたので改めること。

【コメント】
抜歯（Ｔ．ＥＸＴ）は、歯又は残根の全部を抜去した場合に算定するもので、歯の破折片の除去に要する費用は、口腔内軟組織異物（人工物）除去術「１　簡単なもの」の所定点数により算定し、この場合において、浸潤麻酔のもとに破折片を除去した場合は、浸潤麻酔料及び使用麻酔薬剤料のそれぞれを算定し、抜歯と同時に歯肉を剥離して歯槽骨整形手術等を行った場合は、当該抜歯手術の所定点数に含まれ別に算定できないとされています。

抜歯の際、浸潤麻酔は、当該抜歯手術の所定点数に含まれ別に算定できず、ただし、抜歯のための術前処置として手術野の消毒・麻酔等を行い、抜歯の態勢に入ったが、患者の急変によりやむを得ず抜歯を中止した場合は、抜歯手術は算定できないが、麻酔料は別に算定できるとされています。

ブリッジの支台歯の抜歯に当たり、当該ブリッジの支台歯の一部（抜歯を行う部位とは別の支台歯）を保存し得る場合において、抜歯と同日に次の処置を行った場合においては当該処置に係る費用を別に算定して差し支えないとされています。

イ　保存する支台歯に対して根管治療が必要な場合であって、抜髄又は感染根管処置を行った場合

ロ　ポンティックの除去が必要な場合であって、歯冠修復物又は補綴物の除去を行った場合

ハ　保存する支台歯の歯冠修復物又は補綴物の除去が必要な場合であって、歯冠修復物又は補綴物の除去を行った場合

なお、抜歯に伴う投薬は、必要に応じて行うものとされています。

　２　抜歯手術の難抜歯加算

算定できない難抜歯加算を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、歯根肥大、骨の癒着歯、歯根彎曲等に対する骨の開さく又は歯根分離術等に該当していない。

【コメント】
難抜歯加算とは、歯根肥大、骨の癒着歯又は歯根彎曲等に対して骨の開さく又は歯根分離術等を行った場合に算定するもので、ただし、高血圧等の全身状態との関連から、単に抜歯に当たり注意を要する場合は、当該加算は算定できず、なお、当該加算の対象となる抜歯において、完全抜歯が困難となりやむを得ず抜歯を中止した場合は、抜歯手術の所定点数及び当該加算を算定するとされています。

乳臼歯の歯根が後継永久歯の歯冠を包み込んでおり、抜歯が必要と判断し、歯根分離をして乳臼歯を抜歯した場合及び骨癒着が著しく、骨の開削または歯根分離術を行う必要性が認められる場合に限っては、乳歯に対して難抜歯加算を算定して差し支えなく、なお、算定にあたっては、診療報酬明細書の「処置・手術」欄の「その他」欄に「難抜歯加算」と記載し、点数及び回数を記載するとされています。

難抜歯加算の対象となる歯に対して、抜歯を終了する目的で着手したが、やむを得ず抜歯を中止した場合は、抜歯の所定点数及び難抜歯加算を算定する取扱いであるが、後日行った抜歯については、当該抜歯手術の実態に応じてその費用を算定して差し支えなく、なお、当初から複数日に分けて計画的に抜歯を行う場合は算定できないとされています。

　３　抜歯手術の埋伏歯

算定できない抜歯手術「４　埋伏歯」を算定している次の例が認められたので改めること。

すなわち、骨性の完全埋伏歯又は歯冠部が３分の２以上の骨性埋伏である水平埋伏智歯に該当していない。

【コメント】
「４　埋伏歯」において、完全抜歯が困難となりやむを得ず抜歯を中止した場合は、所定点数により算定するとされています。

「４　埋伏歯」とは、骨性の完全埋伏歯又は歯冠部が３分の２以上の骨性埋伏である水平埋伏智歯をいい、埋伏智歯の隣接歯を抜去し、同時に埋伏（水平）智歯を抜去した場合は、抜去すべき隣接歯が難抜歯加算の対象であるときは、当該隣接歯について難抜歯加算を算定するとされています。

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