歯科の個別指導の書籍を出版し、歯科の保険診療に強い、歯科医師のための弁護士です。
保険医・保険医療機関への個別指導、監査にお悩みの歯科医の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。指導監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。
弁護士鈴木が力を入れている歯科個別指導監査に関するコラムです。
ここでは、歯科保健診療(保険医、保険医療機関、保険診療のルール)についてご説明します。内容は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の公表資料「保健診療の理解のために【歯科】(平成28年度)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。
歯科の個別指導、監査に悩んでいる歯科医の方は、歯科の指導、監査に詳しい弁護士への速やかな相談をお勧めします。個別指導、監査では、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
・ 歯科の個別指導と監査の上手な対応法
1 保険医、保険医療機関
1 保険医とは
健康保険法の規定により、「保険医療機関において健康保険の診療に従事する歯科医師は、厚生労働大臣の登録を受けた歯科医師でなければならない。」(健康保険法第
64 条)こととされている。
この登録(保険医登録)を受けるためには、歯科医師国家試験に合格し、歯科医師免許を受けることにより自動的に登録されるものではなく、歯科医師自らの意思により、勤務先の保険医療機関の所在地を管轄する地方厚生(支)局長へ申請する(所在地を管轄する地方厚生(支)局の事務所がある場合には、当該事務所を経由して行う。)必要がある。また、申請後交付された保険医登録票は適切に管理し、登録内容に変更が生じた時には速やかに(変更の内容によっては保険医登録票を添えて)届け出る必要がある。
2 保険医療機関とは
医療機関である病院、診療所は、医師又は歯科医師が公衆又は不特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所である(医療法1条の5)。保険医療機関は、健康保険法等で規定されている療養の給付を行う病院、診療所であり、病院、診療所の開設者がその自由意思により申請することにより厚生労働大臣の指定を受ける必要がある。(健康保険法第65条)
3 保険医と保険医療機関の責務
@ 保険医の責務
「保険医療機関において診療に従事する保険医は、厚生労働省令の定めるところにより、健康保険の診療に当たらなければならない。」(健康保険法第72条)とされている。
A 保険医療機関の責務
保険医療機関は、厚生労働省令(※注)で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならず(健康保険法第70条)、療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより算定する。(健康保険法第76条)
※注 ここでいう厚生労働省令が「保険医療機関及び保険医療養担当規則(療養担当規則)」と呼ばれるものであり、保険診療を行うに当たっての、保険医療機関と保険医が遵守すべき基本的事項を定めたものである。
2 保健診療の基本的ルール
○ 保険診療は、健康保険法等の各法に基づく、保険者と保険医療機関との間の「公法上の契約」に基づいている。
○ 保険医療機関及び保険医であるということは、健康保険法等で規定されている保険診療のルール(契約の内容)を熟知していることが前提となる。
○ 保険医が保険診療を行うに当たっては、保険診療のルールを遵守する必要がある。
1 保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)
保険診療を行う上で保険医療機関と保険医が遵守すべき事項として厚生労働大臣が定めたものであり、大きく以下の事項につき取りまとめられている。
・第1章:保険医療機関の療養担当
療養の給付の担当の範囲、一部負担金等の受領
領収証等の交付 等
・第2章:保険医の診療方針等
診療の一般的方針、歯科診療の具体的方針
診療録の記載 等
2 診療報酬が支払われる条件
次の全ての条件を満たす場合に限り、診療報酬が支払われることとなっている。
@ 保険医が
A 保険医療機関において
B 健康保険法, 歯科医師法, 医療法, 医薬品医療機器法等の各種関係法令の規定を遵守し
C 「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(療担規則)の規定を遵守し
D 歯科医学的に妥当適切な診療を行い
E 診療報酬点数表に定められたとおりに請求を行っていること
3 保健診療の禁止事項
@ 無診察治療の禁止
・歯科医師は、自ら診察しないで治療をし、又は診断書若しくは処方せんを交付してはならない。(歯科医師法第 20 条)
・保険医の診療は、一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、適確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない。(療担規則第
12 条)
A 特殊療法・研究的検査の禁止
・保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない。(療担規則第 18 条)
・厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、又は処方してはならない。(療担規則第 19 条)
・厚生労働大臣の定める歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴において使用してはならない。(療担規則第 19 条)
・各種の検査は、研究の目的をもって行ってはならない。(療担規則第 21 条)
B 健康診断の禁止
・保険医の診療は、一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、適確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行われなければならない。(療担規則第
12 条)
・健康診断は、療養の給付の対象として行ってはならない。(療担規則第 21条)
C 濃厚(過剰)診療の禁止
・検査、投薬・注射、手術等は必要性を十分考慮した上で必要の範囲内で行う。(療担規則第 21 条)
D 経済上の利益の提供による誘引の禁止
・保険医療機関は、患者に対して、一部負担金の額に応じて収益業務に係る物品の対価の額の値引きをする等、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。(療担規則第
2 条の 4 の 2)
・また、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供する等、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により自己の保険医療機関で診療を受けるように誘引してはならない。(療担規則第
2 条の 4 の 2 第 2 項)
E 特定の保険薬局への誘導の禁止
・保険医療機関は、当該保険医療機関において健康保険の診療に従事している保険医の行う処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行つてはならない。(療担規則第
2 条の 5)
・保険医療機関は、保険医の行う処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。(療担規則第
2 条の 5)
・保険医は、処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行ってはならない。(療担規則第 19 条の 3)
・保険医は、処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。(療担規則第
19 条の 3)
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