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インプラントの失敗の歯科訴訟の判例をご紹介します。歯科トラブル、歯科裁判にお悩みの歯科医の方は、歯科医師のための弁護士、サンベル法律事務所に迷わずご相談下さい。

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歯科訴訟:インプラントの失敗

インプラントのトラブルに強い、歯科医師のための弁護士です。

インプラントに関する患者トラブルにお悩みの歯科医師の方は、迷わずご相談下さい。初期対応が肝心です。まず弁護士に相談しアドバイスを受けることを強くお勧めします。

弁護士鈴木が力を入れている歯科医院法務に関するコラムです。
ここでは、歯科訴訟の判例のご紹介、ご説明を致します。


取り上げる判例は、平成24年10月25日東京地方裁判所の判決です。
なお、説明のために、事案等の簡略化をしています。

 事案の概要

インプラント治療を受けた患者が、同治療により強い疼痛やそしゃく障害等が発生したものであり、担当歯科医師には、@事前検査義務違反、A説明義務違反、B手術手技に関する義務違反、C術後管理義務違反があったなどと主張して、2565万1514円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事案です。

事案の概要は以下のとおりです。

1 インプラント手術に至る経緯及び手術内容

患者(昭和24生)は、平成15年12月8日、右上の差し歯が外れてしまったため、この部分についてインプラント治療を受けたいと考え、インターネットで見つけた歯科医院に電話し予約をした。
患者は、平成15年12月10日、歯科医院を受診し、担当の歯科医師は、患者に、右上に5本、左下に5本のインプラントを埋入するという治療が考えられることなどを説明した。患者がインプラント治療を承諾したため、担当の歯科医師は、即日、当初予定していた右上1〜4番、7番、左下4〜8番、及び、予定していなかった右下7、8番について、インプラント治療を実施した。

2 インプラント手術後の経過

患者は、平成15年12月13日、歯科保健医療センターを受診し、歯科医師に、両額下部腫脹、開口障害、疼痛と診断された。
患者は、平成15年12月16日、インプラント手術を受けた歯科医院を受診し、担当の歯科医師は、患者が痛みを訴えたことから、予定していた抜糸を延期した上で、鎮痛剤を処方した。
患者は、平成15年12月22日、インプラント手術を受けた歯科医院を受診し、担当の歯科医師は、歯周病の処置を行うとともに、抜糸を行った上、右下については印象を行った。
患者は、平成16年1月7日、大学病院を受診し、大学病院歯科医師は、左下7、8番のインプラント周囲炎、左顎下リンパ節炎、左顎下骨骨髄炎と診断した。
患者は、平成16年1月9日、大学病院において、CT撮影を行い、大学病院歯科医師は、@左大臼歯部のインプラント体部分で舌側側皮質に骨折を認め、インプラント体は骨皮質を破り下側にある、A右大臼歯部は、左ほどではないが、舌側側皮質に骨折を認め、インプラント体は骨皮質を破り舌側にある、B右上顎犬歯部のインプラントは鼻腔底を穿孔し、切歯部のインプラントは切歯管を破っていると判断した。
患者は、平成16年1月13日、インプラント手術を受けた歯科医院を受診し、担当の歯科医師は、歯周病の治療を行い、患者の最後の通院となった。
患者は、平成16年2月24日、大学病院を受診し、大学病院歯科医師が、左下7番のインプラントを抜去した。
患者は、平成16年3月31日、大学病院に入院し、大学病院歯科医師が、右下7番及び左下8番のインプラントを抜去した。
患者は、平成16年4月6日、大学病院を受診し、口腔内に腫脹が認められたものの、抜去手術以前のような痛みはなかった。
患者は、平成18年11月9日、大学病院を受診し、右上3番について鼻の付け根が押すと痛いと訴えた。
患者は、平成18年12月11日、大学病院を受診し、右上3番のインプラントが除去された。
患者について、平成23年3月2日、以下の内容の診断書が作成された。
【病名】 ・ 左側下顎顎下部末梢性神経障害性疼痛疑い
     ・ CRPS(複合性局所疼痛症候群)疑い

 争点及び裁判所の判断

争点1 事前検査義務違反の有無

【裁判所の判断】
CT検査や咬み合わせのチェック等が本件で必須であったとはいえない。

争点2 説明義務違反の有無

【裁判所の判断】
診断の内容、実施予定の手術の内容(バイコルチカル法を用い、意図的に穿孔させるという手技を用いることを含む)、手術に付随する危険性、他に選択可能な治療方法があればその内容と利害得失、予後及び右下7,8番についてインプラント治療を行うこと等について、患者に十分に理解させた上で意思決定をさせるに足りる説明を行うことを怠った。

争点3 手術手技に関する義務違反の有無

【裁判所の判断】
下顎インプラントでは穿孔を生じさせることを極力回避すべき注意義務があり、これを怠った。剥離骨折は、慎重さを欠く手技により生じたもので、注意義務違反がある。本件手術当時、インプラントを並列する場合にはその間隔を最低3mm空ける必要があるとの歯科学上の知見があり、注意義務違反がある。口腔内に腫脹、排膿、う蝕等が存在するにもかかわらず抜歯後即時埋入するとの手技を行ったことは注意義務違反がある。

争点4 術後管理義務違反の有無

【裁判所の判断】
CT検査や消炎措置を行うべきであったのであり、注意義務違反がある。

争点5 因果関係の有無

【裁判所の判断】
注意義務違反と患者の疼痛や咀嚼障害との相当因果関係はない。

争点6 患者の損害

【裁判所の判断】
合計       331万6945円
 内訳 治療費   61万5570円
    医薬品      1990円
    交通費    3万6012円
    休業損害  36万3373円
    慰謝料  200万0000円
    弁護士費用 30万0000円

 判決:結論

被告は、原告に対し、331万6945円及びこれに対する平成20年10月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


インプラント治療の失敗、インプラントのトラブル、インプラント訴訟、インプラント裁判に悩んでいる歯科医の方は、迷わずお電話を下さい。診療録などの証拠及び患者の主張内容などを十分に確認聴取した上で、取るべき対応、留意点などをアドバイス致します。


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