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個別指導、監査の判例(1):1日100人の患者診療

歯科の個別指導の書籍を出版し、歯科の指導監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

個別指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。

ここでは、保険医登録取消等処分取消請求事件の判例をご紹介します。

取り上げる判例は、平成19年3月2日名古屋地方裁判所の決定です。
説明のために、事案等の簡略化をしています。

指導監査については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。

【コラム】歯科の個別指導と監査の上手な対応法

 事案の概要

歯科医師が、愛知社会保険事務局長が歯科医師に対してした保険医の登録の取消し及び歯科医師の開設する歯科医院に対してした医療機関の指定の取消しがいずれも違法であるとして、各処分の取消しを求める本案訴訟を提起したのに伴い、これらの処分の効力の停止を求めた事案です。

事案の概要は以下のとおりです。

1 個別指導に至る経緯

歯科医師は、平成7年4月24日に医籍登録し、同年5月から歯科医院に勤務して歯科医師として稼働し、同年6月27日保険医として登録された。歯科医師は、平成15年3月、当該歯科医院を退職し、同年4月1日、本件歯科医院を開設
し、保険医療機関としての指定を受けた。
歯科医師は、平成15年7月17日、新規指導を受けた後、平成16年1月22日に新規の個別指導を受け、再指導とされた。また、同年9月22日には愛知県社会保険診療報酬請求書審査委員会の任意面接を受け、他の診療行為がなくて、P処のみの算定が多く、薬剤塗布の算定が多いこと、そして、歯科医院については、診療報酬請求が極めて多数に上っている状況であるにもかかわらず、歯科医師1名、歯科衛生士1名、歯科助手9名という人員構成からして、質の高い医療の提供がなされているとは解し難く、一人の歯科医師で診療をするにはあまりにも請求件数が多くて、適切な医療の提供がなされているとは認められないので、歯科医師の数を増やすなどして良質な医療の提供を心がけること、また、全体的にセット化された請求内容となっているので初期診断を適切に行い、個々の患者について診療方針を立てて診療に当たるべきことなどの指摘がなされ、歯科医師はこれらを了解した。同審査委員会は、同年10月12日、当該任意面接の状況等を、愛知県社会保険事務局に通知し、歯科医師に対し、指導を実施するよう要請した。
歯科医師は、平成17年1月22日以降、同年7月10日までの間に、順次、合計6名の非常勤歯科医師を雇用した。

2 個別指導から監査に至る経緯

要請を受けた処分行政庁は、同年2月7日、歯科医師に対する個別指導を実施したが、一日当たりの患者数が100名程に達しており、歯科医師一名で診療を行うことが困難な患者数であったことから、無資格者である歯科助手に診療の一部を行わせていることが疑われたため、調査を実施すべく個別指導を中断した。
また、同年3月14日、愛知県に対し、歯科医院において、無資格者が診療行為等を行っているとの情報提供があったため、同年5月10日、豊橋市保健所が立入検査を実施したが、同検査では、当該情報に該当する事実は確認されなかった。
処分行政庁は、同年7月11日、歯科医院に対する個別指導を再開し、平成16年9月13日における100名程度の患者のカルテ等から診療内容等の確認をしたところ、混合診療を行っていたことが疑われたことから、患者調査を行うため、個別指導を中断した。

3 監査から取消処分に至る経緯

処分行政庁は、患者調査の結果、混合診療や無資格者によるスケーリングの事実が疑われたことから、歯科医院に対し、平成16年7月分から平成17年7月分までの期間の診療内容について、平成17年10月25日から平成18年3月14日までの間に前後7回にわたって監査を実施した。
処分行政庁は、監査の結果、歯科医院においては、
@無資格者である歯科助手に歯周疾患指導管理、P処、スケーリング、歯科衛生実地指導、歯周基本検査、印象採得、装着、研磨などの診療行為を行わせ、診療報酬を不正に請求していた事実、
A再診、歯周疾患指導管理、P処、スケーリング、歯科衛生実地指導、処方、調剤、薬剤、薬剤情報提供、咬合調整、除去などについて自由診療と保険診療を同時に行い、診療報酬を不正に請求していた事実、
B歯周疾患指導管理料、歯科口腔疾患指導管理料、歯科衛生実地指導料、加圧根充、ティッシュコンディショニング、除去、平行測定、リテイナーの算定要件を満たしていないにもかかわらず、診療報酬を不当に請求した事実、
以上の@〜Bが多数回に及んで存在することを把握し、歯科医師及び歯科医院に対して、取消処分をすることを相当と判断した。
処分行政庁は、平成18年5月22日、申立人に対する聴聞手続を実施した上、同年9月29日、取消処分をした。

 争点及び裁判所の判断

争点1 重大な損害を避けるための緊急の必要の有無

【裁判所の判断】
保険医療機関の指定取消処分及び保険医登録取消処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるか否かの判断に当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案する必要がある(行政事件訴訟法25条3項)から、この観点に則して検討する。
取消処分を受けた歯科医師や医療機関は、健康保険等を利用しない、いわゆる自由診療による患者を診察し、診療を提供することは差し支えないが、国民皆保険制度の下で、健康保険等を利用せずに自由診療によって受診する患者はまれな実態にあるから、保険医療機関指定取消処分及び保険医登録取消処分は当該保険医療機関及び当該保険医に対して重大な影響を及ぼす性質の処分であることはいうまでもないところである。
本件各処分によって歯科医院の経営が破綻する危険性があることは否定できず、その場合に歯科医師が被る損害は、金銭賠償による補填が全く不可能とはいえないとしても、その原状回復は極めて困難であると解されるから、当該損害は本件各処分の効力の停止要件としての重大な損害に当たると解すべきである。

争点2 歯科医師の本案訴訟について理由がないとみえるか否か

【裁判所の判断】
保健医療機関による診療の内容又は診療報酬の請求について行う監査に関する基本的事項について定めた「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成12年5月31日保発第105号厚生省保険局長から都道府県知事、地方社会保険事務局長あて通知)の別添2「監査要領」は、地方社会保険事務局等は、保健医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由がある場合などに監査を実施するものとし、監査後における行政上の措置として、保健医療機関の指定や保険医等の登録の各取消処分並びに保健医療機関等又は保険医等に対する戒告及び注意を定め、これらの措置は、不正又は不当の内容により、以下の基準に従ってなされるものとしている。
 取消処分
 @ 故意に不正又は不当な診療を行ったもの
 A 故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの
 B 重大な過失により、不正又は不当な診療をしばしば行ったもの
 C 重大な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの
 戒告
 @ 重大な過失により、不正又は不当な診療を行ったもの
 A 重大な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの
 B 軽微な過失により、不正又は不当な診療をしばしば行ったもの
 C 軽微な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの
 注意
 @ 軽微な過失により、不正又は不当な診療を行ったもの
 A 軽微な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの
不正又は不当な診療又は診療報酬の請求が、上記要綱に定められた基準に達しないにもかかわらず、取消処分がなされた場合には、平等原則ないし比例原則に違反するものとして、その取消処分は違法というべきである。

本件について検討すると、歯科医師は、平成15年7月17日、新規指定の医療機関を対象とする集団指導を受けた後、約6か月後の平成16年1月22日、新規の個別指導を受けて再指導相当とされ、平成17年2月7日には、愛知県社会保険診療報酬請求書審査委員会による任意面接を受けて、患者数の多さと本件診療所の人員構成の異常さから、診療内容の適正さに対する疑問や、無資格者による診療行為の疑問を指摘され、その後も処分行政庁による個別指導や監査が行われているところ、当該監査結果によれば、本件診療所においては無資格者による診療行為や混合診療などに基づく診療報酬の不正請求、算定要件を満たさない診療報酬請求が多数回にわたって行われていたことが確認され、しかも、そのような不正請求又は不当請求は、監査対象となった患者39名全員について認められた上、それらの不正請求・不当請求が行われた時期も、上記の個別指導や任意面接、立入検査等が行われていた時期の前だけに止まらず、その途中から事後にまで及んでいるのであって、歯科医院においては、その開業当初から健康保険診療制度に従った診療行為が適正に行われておらず、その状況が常態化し、しかも、度重なる指導その他の改善の働きかけを受けたにもかかわらず、それが容易に改善されなかったものと認められる。
歯科医師は、保険医として登録を受けた後、他の歯科医院で約8年間の勤務を経て本件診療所を開設しているのであって、その間に、健康保険診療制度の内容を十分に理解していたものと認められ、また、歯科医院の開設後も、指導等を受けて、それを再確認する機会が十分に与えられているから、不正請求及び不当請求行為は故意に行われたものと認めるほかはなく、仮にそうでないとしても、少なくとも重大な過失によるものと認められる。取消処分の基準を定めた監査要綱に照らせば、本件各処分が平等原則や比例原則に照らして違法と解すべきものとは認められず、これら本件各処分は適法になされたものというべきである。
本件各処分が違法になされたものとは認められず、適法な処分と解されるから、本件申立ては、執行停止の消極的要件である「本案について理由がないとみえるとき」に該当するものというほかない。

 判決(決定):結論

本件申立てをいずれも却下する。


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