歯科の個別指導・監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、厚生局の指導監査の対応業務をしています。
歯科の個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。
ここでは、歯科の保険診療に関して、施設基準に係る保険診療の歯科矯正診断料での算定留意事項、算定要件、個別指導での指摘事項などについてご説明します。
ご説明は、厚生労働省保険局医療課医療指導監査室の保険診療確認事項リスト(歯科)令和6年度改訂版ver.2411に基づくもので、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。最新の取扱いではない可能性や、また、地域などにより運用等異なる場合があることに注意が必要です。
なお、歯科の個別指導、監査に臨む歯科医師の方は、個別指導の基本的な仕組みや対応法など記載しておりますので、まずはこちらのコラム歯科の個別指導と監査をお読みいただくことをお勧めします。
また、手前味噌ですが、もしよろしければ、拙著『歯科の個別指導・監査・医道審議会の行政処分への対応法【改訂版】』もご参考いただければ幸いです。
歯科矯正診断料(保険診療)での指摘事項
1 算定できない歯科矯正診断料
算定できない歯科矯正診断料を算定している次の例が認められたので改めること。
すなわち、歯科矯正診断料に係る施設基準の届出を行っていない、地方厚生(支)局長に届け出た専任の歯科医師以外の歯科医師により歯科矯正診断を行っている、歯科矯正を開始するとき、動的処置を開始するとき、マルチブラケット法を開始するとき、保定を開始するとき及び顎切除等の手術を実施するときのいずれにも該当していない、前回歯科矯正診断料を算定した日から起算して6月以内である、顎口腔機能診断料を算定している。
【コメント】
歯科矯正について、別に厚生労働大臣が定める疾患に係る歯科矯正に必要な抜歯(いわゆる便宜抜歯)は、公的保険の給付の対象となる歯科矯正に伴う一連の治療行為であるため、保険給付の対象として差し支えないとされており、その際、診療報酬明細書の傷病名部位欄には抜歯する部位及び「保険給付歯科矯正抜歯」と記載し、自由診療に伴う便宜抜歯(保険給付の対象外)との峻別を図られたいとされています。
歯科矯正診断料は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関において、歯科矯正を担当する専任の歯科医師(地方厚生(支)局長に届け出ている歯科医師に限る。以下同じ。)が歯科矯正診断を行った場合であって、次のいずれかに該当する場合に限り算定するとされています。
イ 別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常が認められる場合であって、当該疾患の治療を行った医科の保険医療機関又は患者若しくはその家族からの情報及び資料により、当該患者が当該疾患を現に有することが確認された場合
ロ 3歯以上の永久歯萌出不全(前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全である場合に限る。)に起因した咬合異常が認められる場合であって、歯科矯正を行う保険医療機関において、上下顎前歯及び小臼歯のうち3歯以上の骨性の埋伏永久歯(経時的な歯科パノラマエックス線等の撮影を含む経過観察で明らかに歯の移動が認められない永久歯)を有することが確認された場合、なお、「ロ」に該当する場合においては、骨性の埋伏永久歯が隣接する永久歯の歯根吸収の原因になっている場合、歯軸等の異常により萌出困難な場合又は当該歯の歯根彎曲が生じる等の二次的障害を生じる場合に限り算定できる。
歯科矯正診断料は、別に厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常が認められる患者又は3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常が認められる患者の口腔状態、顎骨の形態、成長及び発育等を分析するとともに、歯科矯正セファログラム、口腔内写真、顔面写真等の撮影を行い、これらの分析結果や評価等と過去に行った治療内容の評価と併せて可及的に長期的な予測を行った上で、治療計画書を作成し、患者又はその家族等に対して、その内容について説明し、文書により提供した場合に算定し、なお、歯科矯正セファログラム及び模型調製は別に算定するとされています。
保険医療機関において、届出された歯科医師以外の専任の歯科医師が歯科矯正診断を行った場合は歯科矯正診断料は算定できず、届出が必要な歯科医師について、採用、退職等の異動があった場合は、その都度地方厚生(支)局長に届け出ることとされています。
2 算定要件を満たしていない歯科矯正診断料
算定要件を満たしていない歯科矯正診断料を算定している次の例が認められたので改めること。
すなわち、歯科矯正セファログラム、口腔内写真、顔面写真等による評価又は分析を行っていない、治療計画書を作成していない、治療計画書を患者又はその家族等に提供していない、患者又はその家族等に提供した治療計画書の写しを診療録に添付していない、治療計画書の内容について、患者又はその家族等に説明していない、歯科矯正セファログラムに基づく分析及び歯列弓の分析を行っていない。
【コメント】
歯科矯正診断料を算定した後、「注2」に掲げる歯科矯正診断料を算定した日から起算して6月以内の場合並びに歯科矯正セファログラムに基づく分析及び歯列弓の分析を行わなかった場合は、歯科矯正診断料は、算定できないとされています。
当該保険医療機関において歯科矯正相談を行い、歯科矯正相談料を算定した患者について、当該歯科矯正相談に当たって、「写真診断」の「1 単純撮影」若しくは「2 特殊撮影」又は「歯、歯周組織、顎骨、口腔軟組織」の「1 単純撮影」若しくは「2 特殊撮影」を算定した場合には、当該撮影料を算定した日から起算して3月以内に、歯科矯正診断を行うに当たっての「写真診断」の「1 単純撮影」若しくは「2 特殊撮影」又は「歯、歯周組織、顎骨、口腔軟組織」の「1 単純撮影」若しくは「2 特殊撮影」は別に算定できないとされています。
歯科矯正診断料の算定に係る歯列矯正は、歯科矯正に関する医療を担当する保険医療機関及び別に厚生労働大臣が定める疾患に係る育成医療及び更生医療等当該疾患に係る手術等を担当する保険医療機関の歯科医師又は医師との十分な連携を図り行うものとされ、6歯以上の先天性部分無歯症は、欠損している歯数に第三大臼歯は含めず、なお、
当該疾患に伴う咬合異常の治療を開始する場合は、診療録に欠損している部位を記載するとされています。
なお、診断を行った時であれば、歯科矯正を実際に開始する前であっても算定して差し支えないとされています。
3 治療計画書への適切な記載
治療計画書に記載すべき内容について、【画一的に記載している、記載の不十分な】例が認められたので、次の事項について個々の症例に応じて適切に記載すること。すなわち、全身性疾患の診断名、症状及び所見、口腔領域の症状及び所見【咬合異常の分類、唇顎口蓋裂がある場合は裂型、口腔の生理的機能の状態等】、ヘルマンの咬合発育段階等の歯年齢等、歯科矯正の治療として採用すべき療法、開始時期及び療養上の指導内容等、歯科矯正に関する医療を担当する保険医療機関名、担当歯科医師の氏名、顎離断等の手術を担当する保険医療機関名及び担当歯科医師又は担当医師の氏名。
地方厚生(支)局長に届け出た専任の歯科医師以外の歯科医師により歯科矯正診断を行う場合は、当該歯科医師について速やかに届出を行うこと。
【コメント】
治療計画書を作成し、患者に対し文書による提供することとされ、係る文書とは、次の内容を含むものをいうとされています。
イ 全身性疾患の診断名、症状及び所見
ロ 口腔領域の症状及び所見(咬合異常の分類、唇顎口蓋裂がある場合は裂型、口腔の生理的機能の状態等)・ヘルマンの咬合発育段階等の歯年齢等
ハ 歯科矯正の治療として採用すべき療法、開始時期及び療養上の指導内容等
ニ 歯科矯正に関する医療を担当する保険医療機関名及び担当歯科医師の氏名
ホ 顎離断等の手術を担当する保険医療機関名及び担当歯科医師又は担当医師の氏名(顎離断等の手術を行う場合に限る。)
患者又はその家族等に提供した文書の写しを診療録に添付するものとし、歯科矯正診断料を算定する場合は、診療録に、患者又はその家族等に提供した治療計画書の要点を記載するとされています。
なお、治療計画書と重複する内容については、治療計画書が適切に記載されている場合であれば、診療録に添付することで差し支えないとされています。
個別指導、監査に臨む歯科医の方は、お電話下さい。歯科の個別指導、監査への対応を弁護士がサポートし、指導監査に弁護士が同席します。
歯科の指導、監査のコラム
歯科医院の指導、監査の弁護士のコラムの一覧です。
施設基準に係る保険診療の歯科矯正診断料の算定留意事項、算定要件の他、様々なコラムがございます。
個別指導(歯科)の際や日常の診療にご活用下さい。
1 歯科の指導監査に関するコラム
1 歯科の個別指導と監査の対応法
2 歯科の新規個別指導の対応法
2 歯科保険診療指摘事項のコラム
1 歯科の指摘事項(149):歯科矯正診断料
2 歯科の指摘事項(150):顎口腔機能診断料
3 歯科の指摘事項(151):歯科矯正相談料
4 歯科の指摘事項(152):歯科矯正管理料
5 歯科の指摘事項(153):歯科矯正セファログラム
6 歯科の指摘事項(154):模型調製
7 歯科の指摘事項(155):動的処置
8 歯科の指摘事項(156):咬合採得
8 歯科の指摘事項(157):装着
10 歯科の指摘事項(158):矯正装置
11 歯科の指摘事項(159):口腔病理診断料