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保険診療での診療録の記載方法についてご説明します。保険診療にお悩みの歯科医の方は、指導監査に強いサンベル法律事務所にご相談下さい。

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保険診療の実務留意事項(4):保険診療での診療録の記載方法

歯科の個別指導の書籍を出版し、歯科の保険診療に強い、歯科医師のための弁護士です。

保険医・保険医療機関への個別指導、監査にお悩みの歯科医の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。指導監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。

弁護士鈴木が力を入れている歯科個別指導監査に関するコラムです。

まず、厚生局の集団指導テキストに基づく保険診療の実務留意事項のコラムの一覧をご紹介します。その上で、保険診療での診療録の記載方法(診療録の重要性、記載での注意事項、レセコンで診療録を作成する場合の留意点)についてご説明を致します。
内容は、北海道厚生局の公表資料「保険診療の理解のために(歯科)(平成28年5月現在版)(厚生労働省北海道厚生局医療課・北海道保健福祉部健康安全局国保医療課)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。

 保険診療の実務留意事項

1  保険診療の実務留意事項(1):保険診療とは

2  保険診療の実務留意事項(2):療養担当規則と保険診療

3  保険診療の実務留意事項(3):保険証と傷病の確認

4  保険診療の実務留意事項(4):保険診療の診療録の記載方法

歯科の個別指導、監査に悩んでいる歯科医の方は、歯科の指導、監査に詳しい弁護士への速やかな相談をお勧めします。個別指導、監査では、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
・ 歯科の個別指導と監査の上手な対応法

V 診療録の記載


 1 診療録の重要性

 保険診療において、保険医療機関及び保険医として最低限遵守すべき事項として、保険医療機関及び保険医療養担当規則が定められており、この規則の中に、診療録の記載義務及び保存義務等が明記されている。

 保険医療機関及び保険医療養担当規則違反は、すなわち健康保険法違反(第70条第1項違反、第72条第1項違反)であり、最悪の場合、保険医療機関の指定取消(健康保険法第80条)及び保険医の登録取消(健康保険法第81条)に該当する。

 保険医が、被保険者の診療を行ったときは、遅滞なく、定められた所定の様式の診療録に当該診療に関して必要な事項を記載しなければならない(療担規則第22条)。歯科医師法においても、歯科医師は、患者について診療したときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない(歯科医師法第23条第1項)と定められているが、保険医としても、特に定められている健康保険の診療録に、その診療の事実を記載するものとされているのである。また、保険医療機関としても、療養の給付の担当に関し必要な事項を記載するとともに、他の診療録(自費診療に係る診療録等)と区別して整理することと定められている(療担規則第8条)。

 したがって、保険医の記載責任に属する事項は、主訴、初診時の口腔内所見、傷病名欄、療法処置等欄など診療の具体的事実に関する事項が中心となり、保険医療機関の記載責任に属する事項は、被保険者証欄、受給者欄、負担金欄など療養の給付及び診療報酬請求に必要な事務的事項が中心となる。ただし、歯科においては、同一診療内容であっても、使用材料、歯牙部位、窩洞部位等によって所定点数の異なるものが多数存在し、更に、保険医はその行った診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない(療担規則第23条の2)ことから、適正な請求のためには点数欄についても診療を担当する保険医が責任をもつこととなる。

 保険診療においては、特に、その診療報酬の請求は、事後に診療報酬請求書及び診療報酬明細書をもってなされるものであり、その請求の根拠としては診療録が唯一のものであるから、常に適正な記載を行い、これを整理して保管しておくことが重要である。

 診療録の保存期間は、その完結の日から5年間(療担規則第9条)と保存の起算日が規定されており、当該患者に対する当該診療が完了した日から5年間保存しなければならない。また、診療録は、診療の開始から完結まで一体として存在価値があることから、それぞれの診療終了の時から5年経過によって、順次診療録を廃棄できるものではない。

 「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日 医政発第0912001号)及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平成16年12月24日 厚生労働省)には、診療記録の正確性の確保が規定されており、診療記録の字句等を不当に変える改竄は行ってはならないことが明記されている。また、平成14年12月13日に、医道審議会医道分科会は、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」を取りまとめ、そのなかにおいて、医師・歯科医師に求められる職業倫理に反する行為についての基本的考え方として、「まず、医療提供上中心的な立場を担うべきことを期待される医師、歯科医師が、その業務を行うに当たって当然に負うべき業務を果たしていないことに起因する行為については、国民の医療に対する信用を失墜するものであり、厳正な対処が求められる。」とし、「その業務には、応招義務や診療録に真実を記載する義務など、医師、歯科医師の職業倫理として遵守することが当然に求められている業務を含む。」と明記されており、診療録の改竄が医道審議会における行政処分の対象となりうることが示されている。

 医療過誤訴訟において、一般的には、診療録は信用性が高いものとされ、おおむねその記載に従って事実認定がされていることから、診療録に適正な診療がなされたことが実態どおりに的確に記載されていれば、医師、歯科医師にとって有利な証拠となるが、反対に、診療録に的確に記載されていなければ、適正な診療がなされなかったと認定されることもありうるため、訴えを起こした患者にとって有利な証拠となるという、まったく逆の効果がありうる。

 したがって、医師、歯科医師による診療録の記載内容の充実は、単に適正な診療報酬請求のためだけに必要なのではなく、患者への適切な診療のためにも、記載者たる医師、歯科医師のためにも非常に重要である。

 2 診療録記載に当たっての一般的注意事項

・ 診療録の記載は実態どおりに行い、虚偽の記載は絶対に行わない。
・ 診療録の書換え及び遅滞のある後書きは行わない。
・ 診療録の記載は診療の都度、担当歯科医師が的確に行う。必要があって歯科衛生士に口述筆記させた場合には、担当歯科医師が記載内容を確認して署名又は記名押印をする。
・ 同一の患者を複数の歯科医師が担当する場合には、責任の所在を明確にするため、各自、署名又は記名押印をする。
・ 第三者にも判読できるよう、丁寧な記載を心掛ける。
・ 保険診療から自費診療に移行した場合には、保険分と自費分の診療録を区別して作成し、双方に、移行した旨を記載する。
・ 欄外記載や、鉛筆による記載は行わない。
・ 行間は空けないで記載する。
・ 記載事項の訂正は二本線で抹消して行い、見え消しとする。また、訂正日時・訂正内容・訂正した者が判るように記載する。
・ 以上のほか、診療録の記載内容の信憑性に疑義が生じることは決して行わない。

 3 診療録記載に当たっての具体的注意事項

・ 診療録第1面の各欄(主訴、初診時の口腔内所見、歯式、傷病名、開始・終了年月日、転帰)を的確に記載する。
・ 再度の初診の際の診療録第1面の記載に留意する(改めて、診療録第1面の各欄の記載が必要)。
・ 主訴の記載は患者自身の言葉で行う。
・ 傷病名の記載は略称病名ではなく、正式な診断名(進行度等を含む)を記載する。
・ 治療が必要な傷病名は初診時にすべて記載するように努める。
・ 診療録第2面の各欄(診療年月日、部位、療法処置、点数、負担金)を的確に記載する。
・ 診療録の記載は診療行為の手順に沿って行う。
・ 記載者にしか理解できない独自の記号・略称を使用しない。
・ 点数算定の根拠となる事項に関しては、すべて記載する。
・ 療法処置欄に使用金属名、使用材料名、使用薬剤名、窩洞部位、有床義歯の設計等を的確に記載する。
・ 投薬については、薬剤名、規格、単位、1日投与量、投与日数の記載を的確に行う。
・ 画像診断、検査、投薬、処置、手術等に際しては、所見、症状、経過等の記載を的確に行う。
・ 歯周病検査、補綴関連検査等の検査結果は、診療録に必ず記載又は添付する。
・ 各種加算の算定に際しては、加算理由(状態の記載)を明記する。
・ 歯科衛生士に対して歯科衛生実地指導を指示した場合には、指示内容等の要点を診療録に記載する。また、歯科衛生士には実施内容を歯科衛生士業務記録に記載させる。
・ 保険医療機関の責任において月ごとの診療実日数、合計点数に係る月締めを診療録上で行い、診療報酬明細書との突合チェックに活用する。 

 4 レセコン等で診療録を作成する場合の注意事項

 歯科医師法第23条に基づく診療録の記載については、作成の基礎となった情報の管理体制について十分留意した上で、作成した歯科医師の責任が明白であれば、ワードプロセッサー等所謂OA機器により作成することができることとされており(「診療録等の記載方法等について」昭63.5.6 歯12)、保険医療機関及び保険医療養担当規則第8条及び第22条の適用を受ける保険診療に係る診療録についても同様であるが、 「診療録等の電子媒体による保存について」 (平11.4.22健政発517・医薬発587・保発82)に定められた取扱いが行われていない場合にあっては、保険医の署名又は記名押印を要することとされている(「診療録等の記載方法等について」昭63.5.6 保険発43、最終改正;平11.4.22 保険発62)。

 一方、いわゆる電子カルテ(電子情報処理組織)は、@真正性の確保、A見読性の確保、B保存性の確保の3条件を満たしたものをいい、施設の管理者は運用管理規定を定め、これに従い実施することとされ、特に真正性の確保において、 「故意又は過失による虚偽入力、書換え、消去及び混同を防止すること」及び「作成の責任の所在を明確にすること」が必要とされ(「診療録等の電子媒体による保存について」平11.4.22 健政発517・医薬発587・保発82)、さらに真正性の確保として、 「電磁的記録に記録された事項について、保存すべき期間中における当該事項の改変又は消去の事実の有無及びその内容を確認することができる措置を講じ、かつ、当該電磁的記録の作成に係る責任の所在を明らかにしていること」が必要であるとされている(「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律等の施行等について」平17.3.31 医政発0331009)。

 したがって、いわゆるレセコン(レセプトコンピュータ)は、いわゆる電子カルテに求められている3条件の中でも真正性が確保されておらず、レセコンによる診療録の作成は、筆記具である「ペン」を単に「ワープロ」に持ち替えただけのことであるため、保険診療においては、『診療後に毎回必ずプリントアウトして、その記載内容を担当保険医が確認した上で署名又は記名押印』して、はじめて診療録の記載が完結したこととなる取扱いである。

 また、「診療情報の提供等に関する指針」(平15.9.12 医政発0912001)及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」(平16.12.24 厚生労働省)には、診療記録の正確性の確保が規定され、診療記録の字句等を不当に変える改竄は行ってはならないことが明記されており、診療記録の訂正にあたっては、訂正した者、内容、日時等が分かるように行わなければならないとされている。

 したがって、いわゆるレセコンにより診療録を作成している場合において、事後、診療録の訂正を行う必要が生じた場合には、すでにプリントアウトされ署名又は記名押印されている診療録を手書きで訂正するものであり、レセコンにすでに入力された内容を訂正入力した上で再度プリントアウトして診療録を差し替えるものではない。前述したとおり、レセコンによる診療録の作成は、あくまでも筆記具であるペンをワープロに持ち替えただけのことであり、再度プリントアウトして差し替える行為は、手書きの診療録の場合における診療録の書き換えと何ら相違のない不適切な取扱いである。

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