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保険診療と療養担当規則(保険医療機関及び保険医療養担当規則)についてご説明します。保険診療にお悩みの歯科医の方は、指導監査に強いサンベル法律事務所にご相談下さい。

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保険診療の実務留意事項(2):療養担当規則と保険診療

歯科の個別指導の書籍を出版し、歯科の保険診療に強い、歯科医師のための弁護士です。

保険医・保険医療機関への個別指導、監査にお悩みの歯科医の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。指導監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。

弁護士鈴木が力を入れている歯科個別指導監査に関するコラムです。

まず、厚生局の集団指導テキストに基づく保険診療の実務留意事項のコラムの一覧をご紹介します。その上で、保険診療と療養担当規則(保険医療機関及び保険医療養担当規則)についてご説明を致します。
内容は、北海道厚生局の公表資料「保険診療の理解のために(歯科)(平成28年5月現在版)(厚生労働省北海道厚生局医療課・北海道保健福祉部健康安全局国保医療課)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。

 保険診療の実務留意事項

1  保険診療の実務留意事項(1):保険診療とは

2  保険診療の実務留意事項(2):療養担当規則と保険診療

3  保険診療の実務留意事項(3):保険証と傷病の確認

4  保険診療の実務留意事項(4):保険診療の診療録の記載方法

歯科の個別指導、監査に悩んでいる歯科医の方は、歯科の指導、監査に詳しい弁護士への速やかな相談をお勧めします。個別指導、監査では、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
・ 歯科の個別指導と監査の上手な対応法

T 医療保険制度

 

 5 保険診療

 保険診療は医療であるから、医学的に妥当なものでなければならないのは当然である。また、社会的に一定の質などが求められるので、医療法・医師法・歯科医師法・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律などを遵守することも、前提となる。同時に、医療保険の財源は、一人ひとりが支払う保険料と、国や地方公共団体が徴収する税とからなる貴重な財源であり、限りがあるものである。このため、保険診療にはルールが設けられている。

 健康保険法第70条第1項は、保険医療機関に着目して、次のように規定している。
 『保険医療機関又は保険薬局は、当該保険医療機関において診療に従事する保険医又は当該保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師に、第72条第1項の厚生労働省令で定めるところにより、診療又は調剤に当たらせるほか、厚生労働省令で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならない。』

 また、健康保険法第72条第1項は、保険医に着目して、次のように規定している。
 『保険医療機関において診療に従事する保険医又は保険薬局において調剤に従事する保険薬剤師は、厚生労働省令で定めるところにより、健康保険の診療又は調剤に当たらなければならない。』

 国民健康保険法等の他の医療保険に関する法律においても、「保険医療機関」及び「保険医」により医療が提供されることとなっている。逆に言えば、国保か健保かを問わず不適正な医療を行ったことにより保険医療機関の指定や保険医の登録を取り消されると、健保だけでなく他の医療保険も取り扱うことができなくなる。

 これらの規定に基づく厚生労働省令が「療担規則」であり、保険診療の基本的なルールを定めている。保険医療機関と保険医は、このように、法律に基づいてこの療担規則に従うことが義務付けられているのである。

 療担規則とは略称であり、正式には「保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)」という。この規則はもともと昭和32年に制定されたものであるが、随時改正が行われており、例えば、平成28年診療報酬改定に合わせて平成28年3月4日に改正が行われている。今後も診療報酬改定に伴うなどの改正があり得るので、注意が必要である。

 療担規則には、第1章に保険医療機関として療養の給付を担当する際のルールが、第2章に保険医の診療方針等が規定されている。
 いくつか紹介する。
 ・懇切丁寧(療担規則第2条第1項、第13条)
 ・妥当適切(第2条第2項、第12条)
 ・申請や費用請求の適正実施(第2条の3、第23条の2)
 ・健康保険事業の健全な運営阻害回避(第2条の4、第19条の2)
 ・特定の保険薬局への誘導禁止(第2条の5、第19条の3)
 ・被保険者証の確認(第3条)
 ・一部負担金の受領義務(第5条)
 ・個別費用区分領収証の交付義務(第5条の2、第5条の2の2)
 ・証明書等の無償交付[一部例外あり] (第6条)
 ・カルテ等への記載と整備・保存(第8条、第9条、第22条)
 ・診療に関する他医からの照会への対応(第16条の2)
 ・特殊療法等の禁止(第18条)
 ・使用する医薬品・歯科材料の指定(第19条)
 また、第21条には、歯科診療の具体的方針が明示されている。

 以上が療担規則の概略であるが、療養の給付に要する費用の額については、別に定められている。それは、「診療報酬の算定方法」である。その別表第1が医科診療報酬点数表、別表第2が歯科診療報酬点数表、別表第3が調剤報酬点数表である。通常、二年に一度の診療報酬改定により全面改正されている。また、この「診療報酬の算定方法」に基づいて、各種の「施設基準」が定められている。その性格に応じ、例えば、地域歯科診療支援病院歯科初診料の施設基準は「基本診療料の施設基準等」に、歯科矯正診断料の施設基準は「特掲診療料の施設基準等」に定められている。

 保険で用いることのできる薬剤については、「使用薬剤の薬価(薬価基準)」により定められている。心臓ペースメーカなどの特定保険医療材料については、「特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)」に定められている。

 また、診療報酬明細書の様式をはじめ費用の請求に関しては、「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」に定められている。

 6 保険医療機関及び保険医療養担当規則

 目次
第1章 保険医療機関の療養担当(第1条〜第11条の3)
第2章 保険医の診療方針等(第12条〜第23条の2)
第3章 雑則(第24条)<略>
附則 <略>

第1章 保険医療機関の療養担当
(療養の給付の担当の範囲)

第1条 保険医療機関が担当する療養の給付並びに被保険者及び被保険者であった者並びにこれらの者の被扶養者の療養(以下単に「療養の給付」という。)の範囲は、次のとおりとする。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

(療養の給付の担当方針)
第2条 保険医療機関は、懇切丁寧に療養の給付を担当しなければならない。
2 保険医療機関が担当する療養の給付は、被保険者及び被保険者であった者並びにこれらの者の被扶養者である患者(以下単に「患者」という。)の療養上妥当適切なものでなければならない。

(診療に関する照会)
第2条の2 保険医療機関は、その担当した療養の給付に係る患者の疾病又は負傷に関し、他の保険医療機関から照会があった場合には、これに適切に対応しなければならない。

(適正な手続の確保)
第2条の3 保険医療機関は、その担当する療養の給付に関し、厚生労働大臣又は地方厚生局長若しくは地方厚生支局長に対する申請、届出等に係る手続及び療養の給付に関する費用の請求に係る手続を適正に行わなければならない。

(健康保険事業の健全な運営の確保)
第2条の4
保険医療機関は、その担当する療養の給付に関し、健康保険事業の健全な運営を損なうことのないよう努めなければならない。

(経済上の利益の提供による誘引の禁止)
第2条の4の2
保険医療機関は、患者に対して、第5条の規定により受領する費用の額に応じて当該保険医療機関が行う収益業務に係る物品の対価の額の値引きをすることその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供により、当該患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。
2 保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。

(特定の保険薬局への誘導の禁止)
第2条の5
保険医療機関は、当該保険医療機関において健康保険の診療に従事している保険医(以下「保険医」という。)の行う処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行ってはならない。
2 保険医療機関は、保険医の行う処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。

(掲示)
第2条の6
保険医療機関は、その病院又は診療所内の見やすい場所に、第5条の3第4項、第5条の3の2第4項及び第5条の4第2項に規定する事項のほか、別に厚生労働大臣が定める事項を掲示しなければならない。

(受給資格の確認)
第3条
保険医療機関は、患者から療養の給付を受けることを求められた場合には、その者の提出する被保険者証によって療養の給付を受ける資格があることを確めなければならない。ただし、緊急やむを得ない事由によって被保険者証を提出することができない患者であって、療養の給付を受ける資格が明らかなものについては、この限りでない。

(要介護被保険者等の確認)
第3条の2
保険医療機関等は、患者に対し、訪問看護、訪問リハビリテーションその他の介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第1項に規定する居宅サービス又は同法第8条の2第1項に規定する介護予防サービスに相当する療養の給付を行うに当っては、同法第12条第3項に規定する被保険者証の提示を求めるなどにより、当該患者が同法第62条に規定する要介護被保険者等であるか否かの確認を行うものとする。

(被保険者証の返還)
第4条
保険医療機関は、当該患者に対する療養の給付を担当しなくなったとき、その他正当な理由により当該患者から被保険者証の返還を求められたときは、これを遅滞なく当該患者に返還しなければならない。ただし、当該患者が死亡した場合は、健康保険法(大正11年法律第70号。以下「法」という。)第100条、第105条又は第113条の規定により埋葬料、埋葬費又は家族埋葬料を受けるべき者に返還しなければならない。

(一部負担金等の受領)
第5条
保険医療機関は、被保険者又は被保険者であった者については法第74条の規定による一部負担金、法第85条に規定する食事療養標準負担額(同条第2項の規定により算定した費用の額が標準負担額に満たないときは、当該費用の額とする。以下単に「食事療養標準負担額」という。)、法第85条の2に規定する生活療養標準負担額(同条第2項の規定により算定した費用の額が生活療養標準負担額に満たないときは、当該費用の額とする。以下単に「生活療養標準負
担額」という。)又は法第86条の規定による療養(法第63条第2項第1号に規定する食事療養(以下「食事療養」という。)及び同項第2号に規定する生活療養(以下「生活療養」という。)を除く。)についての費用の額に法第74条第1項各号に掲げる場合の区分に応じ、同項各号に定める割合を乗じて得た額(食事療養を行った場合においては食事療養標準負担額を加えた額とし、生活療養を行った場合においては生活療養標準負担額を加えた額とする。)の支払を、被扶養者については法第76条第2項、第85条第2項、第85条の2第2項又は第86条第2項第1号の費用の額の算定の例により算定された費用の額から法第110条の規定による家族療養費として支給される額に相当する額を控除した額の支払を受けるものとする。
2 保険医療機関は、食事療養に関し、当該療養に要する費用の範囲内において法第85条第2項又は第110条第3項の規定により算定した費用の額を超える金額の支払を、生活療養に関し、当該療養に要する費用の範囲内において法第85条の2第2項又は第110条第3項の規定により算定した費用の額を超える金額の支払を、法第63条第2項第3号に規定する評価療養(以下「評価療養」という。)、同項第4号に規定する患者申出療養(以下「患者申出療養」という。)又は同項第5号に規定する選定療養(以下「選定療養」という。)に関し、当該療養に要する費用の範囲内において法第86条第2項又は第110条第3項の規定により算定した費用の額を超える金額の支払を受けることができる。
3 保険医療機関のうち、医療法(昭和23年法律第205号)第4条第1項に規定する地域医療支援病院(同法第7条第2項第5号に規定する一般病床(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の2の2第3項に規定する指定発達支援医療機関及び同法第42条第2号に規定する医療型障害児入所施設に係るものを除く。)の数が500以上であるものに限る。)及び医療法第4条の2第1項に規定する特定機能病院であるものは、法70条第3項に規定する保険医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携のための措置として、次に掲げる措置を講ずるものとする。
一 患者の病状その他の患者の事情に応じた適切な他の保険医療機関を当該患者に紹介すること。
二 選定療養(厚生労働大臣の定めるものに限る。)に関し、当該療養に要する費用の範囲内において厚生労働大臣の定める金額以上の金額の支払を求めること。(厚生労働大臣の定める場合を除く。)

(領収証等の交付)
第5条の2
保険医療機関は、前条の規定により患者から費用の支払を受けるときは、正当な理由がない限り、個別の費用ごとに区分して記載した領収証を無償で交付しなければならない。
2 厚生労働大臣の定める保険医療機関は、前項に規定する領収証を交付するときは、正当な理由がない限り、当該費用の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない。
3 前項に規定する明細書の交付は、無償で行わなければならない。
【留意事項】
※ 400床以上の病院は平成26年4月以降、明細書発行が義務化。400床未満の病院は「正当な理由」があれば、平成26年4月か ら平成28年3月までの2年間は明細書の発行義務は免除。ただし、平成28年4月以降は義務化。
※ 診療所においては、「正当な理由」があれば明細書の発行義務は免除。「正当な理由」とは明細書発行機能が付与されていないレセプトコンピュータを使用している、または、自動入金機を使用しており、自動入金機で明細書を発行しようとした場合には、自動入金機の改修が必要な場合。
※ 診療所であって、「正当な理由」に該当する保険医療機関は、明細書発行に関する状況(明細書発行の有無、明細書発行の手続き費用徴収の有無等)の院内掲示が必要。なお「正当な理由」に該当する保険医療機関であっても、患者から明細書の発行を求められた場合には明細書を交付しなければならない。


第5条の2の2 前条第2項の厚生労働大臣の定める保険医療機関は、公費負担医療(厚生労働大臣の定めるものに限る。)を担当した場合、(第5条第1項の規定により患者から費用の支払を受ける場合を除く。)において、患者から求めがあったときは、正当な理由がない限り、当該公費負担医療に関する費用の請求に係る計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を交付しなければならない。
2 前項に規定する明細書の交付は、無償で行わなければならない。

(食事療養)
第5条の3
保険医療機関は、その入院患者に対して食事療養を行うに当たっては、病状に応じて適切に行うとともに、その提供する食事の内容の向上に努めなければならない。
2 保険医療機関は、食事療養を行う場合には、次項に規定する場合を除き、食事療養標準負担額の支払を受けることにより食事を提供するものとする。
3 保険医療機関は、第5条第2項の規定による支払を受けて食事療養を行う場合には、当該療養にふさわしい内容のものとするほか、当該療養を行うに当たり、あらかじめ、患者に対しその内容及び費用に関して説明を行い、その同意を得なければならない。
4 保険医療機関は、その病院又は診療所の病棟等の見やすい場所に、前項の療養の内容及び費用に関する事項を掲示しなければならない。

(生活療養)
第5条の3の2
保険医療機関は、その入院患者に対して生活療養を行うに当たっては、病状に応じて適切に行うとともに、その提供する食事の内容の向上並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成に努めなければならない。
2 保険医療機関は、生活療養を行う場合には、次項に規定する場合を除き、生活療養標準負担額の支払を受けることにより食事を提供し、温度、照明及び給水に関する適切な療養環境を形成するものとする。
3 保険医療機関は、第5条第2項の規定による支払を受けて生活療養を行う場合には、当該療養にふさわしい内容のものとするほか、当該療養を行うに当たり、あらかじめ、患者に対しその内容及び費用に関して説明を行い、その同意を得なければならない。
4 保険医療機関は、その病院又は診療所の病棟等見やすい場所に、前項の療養の内容及び費用に関する事項を掲示しなければならない。

(保険外併用療養費に係る療養の基準等)
第5条の4
保険医療機関は、評価療養、患者申出療養又は選定療養に関して第5条第2項又は第3項第2号の規定による支払を受けようとする場合において、当該療養を行うに当たり、その種類及び内容に応じて厚生労働大臣の定める基準に従わなければならないほか、あらかじめ、患者に対しその内容及び費用に関して説明を行い、その同意を得なければならない。
2 保険医療機関は、その病院又は診療所の見やすい場所に、前項の療養の内容及び費用に関する事項を掲示しなければならない。

(証明書等の交付)
第6条
保険医療機関は、患者から保険給付を受けるために必要な保険医療機関又は保険医の証明書、意見書等の交付を求められたときは、無償で交付しなければならない。ただし、法第87条第1項の規定による療養費(柔道整復を除く施術に係るものに限る。)、法第99条第1項の規定による傷病手当金、法第101条の規定による出産育児一時金、法第102条第1項の規定による出産手当金又は法第114条の規定による家族出産育児一時金に係る証明書又は意見書については、この限りでない。

(指定訪問看護の事業の説明)
第7条
保険医療機関は、患者が指定訪問看護事業者(法第88条第1項に規定する指定訪問看護事業者並びに介護保険法第41条第1項本文に規定する指定居宅サービス事業者(訪問看護事業を行う者に限る。)及び同法第53条第1項に規定する指定介護予防サービス事業者(介護予防訪問看護事業を行う者に限る。)をいう。以下同じ。)から指定訪問看護(法第88条第1項に規定する指定訪問看護並びに介護保険法第41条第1項本文に規定する指定居宅サービス(同法第8条第4項に規定する訪問看護の場合に限る。)及び同法第53条第1項に規定する指定介護予防サービス(同法第8条の2第4項に規定する介護予防訪問看護の場合に限る。)をいう。以下同じ。)を受ける必要があると認めた場合には、当該患者に対しその利用手続、提供方法及び内容等につき十分説明を行うよう努めなければならない。

(診療録の記載及び整備)
第8条
保険医療機関は、第22条の規定による診療録に療養の給付の担当に関し必要な事項を記載し、これを他の診療録と区別して整備しなければならない。

(帳簿等の保存)
第9条
保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあっては、その完結の日から5年間とする。

(通 知)
第10条
保険医療機関は、患者が次の各号の一に該当する場合には、遅滞なく、意見を附して、その旨を全国健康保険協会又は当該健康保険組合に通知しなければならない。
一 家庭事情等のため退院が困難であると認められたとき。
二 闘争、泥酔又は著しい不行跡によって事故を起したと認められたとき。
三 正当な理由がなくて、療養に関する指揮に従わないとき。
四 詐欺その他不正な行為により、療養の給付を受け、又は受けようとしたとき。

(入 院)
第11条
保険医療機関は、患者の入院に関しては、療養上必要な寝具類を具備し、その使用に供するとともに、その病状に応じて適切に行い、療養上必要な事項について適切な注意及び指導を行わなければならない。
2 保険医療機関は、病院にあっては、医療法の規定に基づき許可を受け、若しくは届出をし、又は承認を受けた病床数の範囲内で、診療所にあっては、同法の規定に基づき許可を受け、若しくは届出をし、又は通知をした病床数の範囲内で、それぞれ患者を入院させなければならない。ただし、災害その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りでない。

(看 護)
第11条の2
保険医療機関は、その入院患者に対して、患者の負担により、当該保険医療機関の従業者以外の者による看護を受けさせてはならない。
2 保険医療機関は、当該保険医療機関の従業者による看護を行うため、従業者の確保等必要な体制の整備に努めなければならない。

(報 告)
第11条の3
保険医療機関は、厚生労働大臣が定める療養の給付の担当に関する事項について、地方厚生局長又は地方厚生支局長に定期的に報告を行わなければならない。
2 前項の規定による報告は、当該保険医療機関の所在地を管轄する地方厚生局又は地方厚生支局の分室がある場合においては、当該分室を経由して行うものとする。

第2章 保険医の診療方針等
(診療の一般的方針)
第12条
保険医の診療は、一般に医師又は歯科医師として診療の必要があると認められる疾病又は負傷に対して、的確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行わなければならない。

(療養及び指導の基本準則)
第13条
保険医は、診療に当っては、懇切丁寧を旨とし、療養上必要な事項は理解し易いように指導しなければならない。

(指 導)
第14条
保険医は、診療にあたっては常に医学の立場を堅持して、患者の心身の状態を観察し、心理的な効果をも挙げることができるよう適切な指導をしなければならない。

第15条 保険医は、患者に対し予防衛生及び環境衛生の思想のかん養に努め、適切な指導をしなければならない。

(転医及び対診)
第16条
保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるとき、又はその診療について疑義があるときは、他の保険医療機関へ転医させ、又は他の保険医の対診を求める等診療について適切な措置を講じなければならない。

(診療に関する照会)
第16条の2
保険医は、その診療した患者の疾病又は負傷に関し、他の保険医療機関又は保険医から照会があった場合には、これに適切に対応しなければならない。

(施術の同意)
第17条
保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるという理由によって、みだりに、施術業者の施術を受けさせることに同意を与えてはならない。

(特殊療法等の禁止)
第18条
保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない。

(使用医薬品及び歯科材料)
第19条
保険医は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、又は処方してはならない。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)第2条第16項に規定する治験(以下「治験」という。)に係る診療において、当該治験の対象とされる薬物を使用する場合その他厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
2 歯科医師である保険医は、厚生労働大臣の定める歯科材料以外の歯科材料を歯冠修復及び欠損補綴において使用してはならない。ただし、治験に係る治療において、当該治験の対象とされる機械器具等を使用する場合その他厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。

(健康保険事業の健全な運営の確保)
第19条の2
保険医は、診療に当たっては、健康保険事業の健全な運営を損なう行為を行うことのないよう努めなければならない。

(特定の保険薬局への誘導の禁止)
第19条の3
保険医は、処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行ってはならない。
2 保険医は、処方せんの交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を収受してはならない。

(指定訪問看護事業との関係)
第19条の4
医師である保険医は、患者から訪問看護指示書の交付を求められ、その必要があると認めた場合には、速やかに、当該患者の選定する訪問看護ステーション(指定訪問看護事業者が当該指定に係る訪問看護事業を行う事業所をいう。以下同じ。)に交付しなければならない。
2 医師である保険医は、訪問看護指示書に基づき、適切な訪問看護が提供されるよう、訪問看護ステーション及びその従業者からの相談に際しては、当該指定訪問看護を受ける者の療養上必要な事項について適切な注意及び指導を行わなければならない。

(診療の具体的方針)
第20条
(医師である保険医に係る内容であるため省略)

(歯科診療の具体的方針)
第21条
歯科医師である保険医の診療の具体的方針は、第12条から第19条の3までの規定によるほか、次に掲げるところによるものとする。
一 診察
イ 診察は、特に患者の職業上及び環境上の特性等を顧慮して行う。
ロ 診察を行う場合は、患者の服用状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない。ただし、緊急やむを得ない場合については、この限りではない。
ハ 健康診断は、療養の給付の対象として行ってはならない。
ニ 往診は、診療上必要があると認められる場合に行う。
ホ 各種の検査は、診療上必要があると認められる場合に行う。
ヘ ホによるほか、各種の検査は、研究の目的をもって行ってはならない。ただし、治験に係る検査については、この限りでない。
二 投薬
イ 投薬は、必要があると認められる場合に行う。
ロ 治療上一剤で足りる場合には一剤を投与し、必要があると認められる場合に二剤以上を投与する。
ハ 同一の投薬は、みだりに反覆せず、症状の経過に応じて投薬の内容を変更する等の考慮をしなければならない。
ニ 投薬を行うに当たっては、後発医薬品の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならない。
ホ 栄養、安静、運動、職場転換その他療養上の注意を行うことにより、治療の効果を挙げることができると認められる場合は、これらに関し指導を行い、みだりに投薬をしてはならない。
ヘ 投薬量は、予見することができる必要期間に従ったものでなければならないこととし、厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬については当該厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬ごとに1回14日分、30日分又は90日分を限度とする。
三 処方せんの交付
イ 処方せんの使用期限は、交付の日を含めて4日以内とする。ただし、長期の旅行等特殊の事情があると認められる場合は、この限りでない。
ロ 前イによるほか、処方せんの交付に関しては、前号に定める投薬の例による。
四 注射
イ 注射は、次に掲げる場合に行う。
(1) 経口投与によって胃腸障害を起すおそれがあるとき、経口投与をすることができないとき、又は経口投与によっては治療の効果を期待することができないとき。
(2) 特に迅速な治療の効果を期待する必要があるとき。
(3) その他注射によらなければ治療の効果を期待することが困難であるとき。
ロ 注射を行うに当たっては、後発医薬品の使用を考慮するよう努めなければならない。
ハ 内服薬との併用は、これによって著しく治療の効果を挙げることが明らかな場合又は内服薬の投与だけでは治療の効果を期待することが困難である場合に限って行う。
ニ 混合注射は、合理的であると認められる場合に行う。
ホ 輸血又は電解質若しくは血液代用剤の補液は、必要があると認められる場合に行う。
五 手術及び処置
イ 手術は、必要があると認められる場合に行う。
ロ 処置は、必要の程度において行う。
六 歯冠修復及び欠損補綴
歯冠修復及び欠損補綴は、次に掲げる基準によって行う。
イ 歯冠修復
(1) 歯冠修復は、必要があると認められる場合に行うとともに、これを行った場合は、歯冠修復物の維持管理に努めるものとする。
(2) 歯冠修復において金属を使用する場合は、代用合金を使用するものとする。ただし、前歯部の金属歯冠修復については金合金又は白金加金を使用することができるものとする。
ロ 欠損補綴
(1) 有床義歯
(一) 有床義歯は、必要があると認められる場合に行う。
(二) 鉤は、金位14カラット合金又は代用合金を使用する。
(三) バーは、代用合金を使用する。
(2) ブリッジ
(一) ブリッジは、必要があると認められる場合に行うとともに、これを行った場合は、その維持管理に努めるものとする。
(二) ブリッジは、金位14カラット合金又は代用合金を使用する。ただし、金位14カラット合金は、前歯部の複雑窩洞又はポンティックに限って使用する。
(3) 口蓋補綴及び顎補綴並びに広範囲顎骨支持型補綴
口蓋補綴及び顎補綴並びに広範囲顎骨支持型補綴は、必要があると認められる場合に行う。
七 リハビリテーション
リハビリテーションは、必要があると認められる場合に行う。
七の二 居宅における療養上の管理等
居宅における療養上の管理及び看護は、療養上適切であると認められる場合に行う。
八 入院
イ 入院の指示は、療養上必要があると認められる場合に行う。
ロ 通院の不便等のための入院の指示は行わない。
ハ 保険医は、患者の負担により、患者に保険医療機関の従業者以外の者による看護を受けさせてはならない。
九 歯科矯正
歯科矯正は、療養の給付の対象として行ってはならない。ただし、別に厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。

(診療録の記載)
第22条
保険医は、患者の診療を行った場合には、遅滞なく、様式第1号又はこれに準ずる様式の診療録に、当該診療に関し必要な事項を記載しなければならない。

(処方せんの交付)
第23条
保険医は、処方せんを交付する場合には、様式第2号又はこれに準ずる様式の処方せんに必要な事項を記載しなければならない。
2 保険医は、その交付した処方せんに関し、保険薬剤師から疑義の照会があった場合には、これに適切に対応しなければならない。

(適正な費用の請求の確保)
第23条の2
保険医は、その行った診療に関する情報の提供等について、保険医療機関が行う療養の給付に関する費用の請求が適正なものとなるよう努めなければならない。

第3章 雑則 <略>


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