歯科の医道審議会の書籍を出版し、歯科医の行政処分に強い、弁護士の鈴木陽介です。
医道審議会(歯科)の対応は、弁護士に依頼すべきです。
ここでは、医道審議会での事案別の考え方(歯科医師法違反、身分法違反、医療法違反、薬事法違反、覚せい剤取締法違反、再生医療等安全性確保法違反、殺人及び傷害、交通事故・交通事犯、医療過誤)をご説明します。
厚生労働省の医道審議会医道分科会の公表資料「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について(平成31年1月30日改正,医道審議会医道分科会)」に基づいており、編集等しています。
行政処分・医道審議会(歯科)については、以下のコラムもご覧いただければ幸いです。
【コラム】歯科医への行政処分、医道審議会の上手な対応法
医道審議会、医道分科会の事案別考え方
1 歯科医師法違反(無資格歯科医業、無診察治療等)
医療は国民の健康に直結する極めて重要なものであることから、医師法、歯科医師法において、医師、歯科医師の資格・業務を定め、医師、歯科医師以外の者が医業、歯科医業を行うことを禁止し、その罰則規定は、国民保健に及ぼす危険性の大きさを考慮して量刑が規定されているところです。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが国民の健康な生活を確保する任務を負うべき医師、歯科医師自らが、医師法又は歯科医師法に違反する行為は、その責務を怠った犯罪として、重い処分とします。
2 身分法違反(無資格者の関係業務の共犯等)
医療関係職種の身分法は、医師、歯科医師の補助者として医療に従事する者の資格・業務について規定した法律です。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、医療において指導的な立場にある医師、歯科医師自らが、医療に関する基本的な法令に違反する行為は、医師、歯科医師が当然に果たすべき義務を怠った犯罪として、医師法、歯科医師法違反と同様に、重い処分とします。
3 医療法違反(無許可開設の共犯等)
医療法は、病院等の開設及び管理等に関し必要な事項を定めることにより、医療を受ける者の利益の保護を図り、国民の健康の保持に寄与することを目的としています。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師自らが、同法令に違反することは、基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とします。
4 薬事法違反(医薬品の無許可販売又はその共犯等)
薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に必要な措置等を講じることにより、保健衛生の向上を図ることを目的としています。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師自らが、同法令に違反することは、基本的倫理を遵守せず、国民の健康を危険にさらす行為であることから、重い処分とします。
5 麻薬及び向精神薬取締法違反、覚せい剤取締法違反等
麻薬、覚醒剤等に関する犯罪(麻薬、向精神薬、覚せい剤及び大麻の不法譲渡、不法譲受、不法所持、自己施用等)に対する司法処分は、一般的には懲役刑となる場合が多く、その量刑は、不法譲渡した場合や不法所持した麻薬等の量、施用期間の長さ等を勘案して決定され、累犯者については、更に重い処分となっています。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師として、麻薬等の薬効の知識を有し、その害の大きさを十分認識しているにも関わらず、自ら違反したということに対しては、重い処分とします。
6 再生医療等の安全性の確保等に関する法律違反
再生医療等は、これまで有効な治療法のなかった疾患の治療ができるようになるなど、国民の期待が高い一方、新しい医療であることから、安全性の確保等を図りつつ迅速に提供する必要があるため、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下「再生医療等安全性確保法」という。)により、再生医療等を提供しようとする場合には、あらかじめ再生医療等提供計画を厚生労働大臣に提出することを義務付けるなど、再生医療等の安全性の確保に関する手続等を定めています。
再生医療等提供計画を提出しないで再生医療等の提供を行った場合など、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師、歯科医師自らが、同法令に違反することは、再生医療等の安全な提供を阻害し、医療の質を低下させることにより、国民の生命及び健康に影響を与えるおそれがあることから、再生医療等安全性確保法に基づく行政処分とは別に医師法又は歯科医師法に基づく行政処分を行うこととします。
また、その行政処分の程度は、事案の悪質性や注意義務の程度等を考慮して判断します。
7 殺人及び傷害(殺人、傷害(致死)、暴行等)
本来、人の命や身体の安全を守るべき立場にある医師、歯科医師が、殺人や傷害の罪を犯した場合には厳正な処分をすべきと考えられますが、個々の事案では、その様態や原因が様々であることから、それらを考慮する必要があります。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、殺人、傷害致死といった悪質な事案は当然に重い処分とし、その他の暴行、傷害等は、医師、歯科医師としての立場や知識を利用した事案かどうか、事犯に及んだ情状などを考慮して判断します。
8 業務上過失致死(致傷)
1 交通事故・交通事犯(業務上過失致死、道路交通法違反等)
自動車等による業務上過失致死(傷害)等については、医師、歯科医師に限らず不慮に犯し得る行為であり、また、医師、歯科医師としての業務と直接の関連性はなく、その品位を損する程度も低いことから、基本的には戒告等の取り扱いとします。
ただし、救護義務を怠ったひき逃げ等の悪質な事案については、行政処分の対象とし、行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、人の命や身体の安全を守るべき立場にある医師、歯科医師としての倫理が欠けていると判断される場合には、重めの処分とします。
2 医療過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害等)
人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師、歯科医師は、その業務の性質に照し、危険防止の為に医師、歯科医師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤となります。
司法処分においては、当然、医師としての過失の度合い及び結果の大小を中心として処分が判断されることとなります。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定しますが、明らかな過失による医療過誤や繰り返し行われた過失など、医師、歯科医師として通常求められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分とします。
なお、病院の管理体制、医療体制、他の医療従事者における注意義務の程度や生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断します。
歯科医師法違反、交通事故で医道審議会、行政処分に臨む歯科医の方は、お電話下さい。歯科の行政処分の対応を弁護士がアドバイスします。